ローマから始まる Incipit Romae

その始まりは、小さな集落だったという。紀元前753年、古代イタリア人の一派であるラテン人によって、テベレ川のほとりに建国された都市国家ローマ。その後、1000年もの間、地中海世界に君臨するローマ帝国を築く端緒となったのは、ローマ街道の最初の道である「アッピア街道」と、海外に初めての属州として手に入れた「シチリア島」であろう。“街道の女王”の異名を持つアッピア街道と、“地中海の交差点”と呼ばれるシチリア島の記憶を訪ねる。

Photo Chiyoshi Sugawara(P1~3) / Masahiro Goda(P4)  Text Nile’s NILE

その始まりは、小さな集落だったという。紀元前753年、古代イタリア人の一派であるラテン人によって、テベレ川のほとりに建国された都市国家ローマ。その後、1000年もの間、地中海世界に君臨するローマ帝国を築く端緒となったのは、ローマ街道の最初の道である「アッピア街道」と、海外に初めての属州として手に入れた「シチリア島」であろう。“街道の女王”の異名を持つアッピア街道と、“地中海の交差点”と呼ばれるシチリア島の記憶を訪ねる。

Palermo

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    シチリア島の北西部に位置する州都のパレルモ。海を見守るように鎮座するのは、守護聖人サンタ・ロザリア。紀元前3世紀からローマに支配され、その後もイスラムやノルマンに征服されるが、1130年にはシチリア王国が成立し首都として栄える。
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    左:さんさんと降り注ぐ太陽の恵みを受けて育った柑橘も特産だ。
    右:1㎞以上も続く活気ある市場の中で、やはり新鮮な魚がたくさん並ぶ。
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    左:彩り豊かな野菜。どれも地中海の恵みにあふれていて美しい。
    右:地中海の中でも重要な交易拠点として発展してきたパレルモの市場はイタリアでも最大級。
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地中海への進出

イタリア半島統一から8年後、ローマは戦争によって、海外へと領土を拡大していく。前264年に始まったポエニ戦争(第1次)では、当時、地中海の海上交易を掌握していた強国カルタゴと戦う。この時ローマは、シチリアをアフリカ進出の足場とするべく、カルタゴに代わって地中海を支配することを考えていた。そして、前227年にカルタゴから地中海の制海権とともに、海外初の属州としてシチリアを手中に治める。属州とは、イタリア半島以外のローマの征服地のことである。

ローマはシチリアに、軍事、司法、民政の全権を持つ総督を置いて統治する。もともとシチリアでは、農業が盛んで、ローマ市民の食糧としての穀物を供給し続け、ローマ帝国の繁栄を支えることになる。後に、シチリア生まれのギリシャ人の歴史家ディオドロスは、第1次ポエニ戦争に関して「シチリアは(ローマ)帝国の拡張に非常に貢献することができた最も高貴な、最も華麗な島である」と回顧したという。

「権威」を重んじたローマ帝国の初代皇帝アウグストゥスの統治から200年間、ローマは「パックス・ロマーナ(ローマの平和)」という最盛期を迎える。ローマ帝国の支配のもと、地中海には大きな戦争は起きず、平和に繁栄した。もちろん、この間に領土を最も広げ、経済や文化も発展。ローマ文明が地中海に広がっていった。

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    1300年ごろ創設されたサン・ドメニコ教会。1458年に建てられたが、現在の教会は1640年に再建したもの。1853年以降は著名人が埋葬されるようになり、パレルモのパンテオンとも呼ばれている。
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    聖母マリアに捧げられたマルトラーナ教会は、シチリア王国初代国王を支えた重臣の一人が1143年に創設。瑠璃色の聖龕(せいがん)の上には「聖母被昇天」の絵画が飾られている。2015年にはアラブ・ノルマン様式の建造物として世界遺産にも登録された。
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※『Nile’s NILE』2025年1月号に掲載した記事をWEB用に編集し、掲載しています

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ラグジュアリーとは何か?

ラグジュアリーとは何か?

それを問い直すことが、今、時代と向き合うことと同義語になってきました。今、地球規模での価値観の変容が進んでいます。
サステナブル、SDGs、ESG……これらのタームが、生活の中に自然と溶け込みつつあります。持続可能な社会への意識を高めることが、個人にも、社会全体にも求められ、既に多くのブランドや企業が、こうしたスタンスを取り始めています。「Nileport」では、先進的な意識を持ったブランドや読者と価値観をシェアしながら、今という時代におけるラグジュアリーを捉え直し、再提示したいと考えています。