2025年 京都モダン建築祭 前編
京都に見る日本の近代建築の幕開け

11月1日から9日まで開催された「京都モダン建築祭」を前後編で紹介。129件が参加し、普段は見学できない貴重な建築も多数公開された。前編では、明治期から大正期にかけて花開いた和洋折衷の建築群を中心に、京都の新たな魅力に迫る。

Text Koko Shinoda

11月1日から9日まで開催された「京都モダン建築祭」を前後編で紹介。129件が参加し、普段は見学できない貴重な建築も多数公開された。前編では、明治期から大正期にかけて花開いた和洋折衷の建築群を中心に、京都の新たな魅力に迫る。

祇園甲部歌舞練場

社寺仏閣や町家などの印象が強い古の都は、実は近代建築の宝庫でもある。京都は戦災や大きな自然災害を免れたことで、明治時代にさかのぼる建築が随所に点在。和洋折衷の意匠を取り入れた数々の建築である。

こうした建築を「見る・聴く・歩く・語る」を通して体験できる文化イベントが「2025年京都モダン建築祭」だ。11月1日から9日の開催期間中には延べ7万人以上が参加し、大きな注目を集めた。文化庁の京都移転記念事業として2022年に始まった本建築祭は、京都市と実行委員会の共催で開催。年々参加する公開建築が増え、2025年は129件に達した。見学パスポート・チケットを購入すれば、開催期間中、参加している建築を自由に見て回ることができる。

本建築祭は、京都に現存するモダン建築の価値の認識を広め、「生きた文化資産」としての保存と活用を官民で促進することを目的としている。実行委員長である京都工芸繊維大学准教授の笠原一人氏は、「建築を見る目を養うことが、文化理解、保存と活用にもつながる。京都文化の柱として定着させ、日本の近代建築の先進地京都ならではのものとして、祇園祭にも匹敵するものに育てたい」と語る。

京都の代表的なモダン建築は、官庁街や繁華街など中心部に多く、町家と洋館、社寺と教会、老舗とアールデコ風の商店などが隣り合っていることも珍しくない。モダン建築に導かれ、古都の意外な軌跡を辿る旅は、新しい京都の表情を発見することにもつながる。

まずは、明治期から大正期にかけての代表的な官公庁庁舎、教育施設、宗教施設、企業社屋、商業施設、都市インフラなどを紹介したい。東京遷都による産業の衰退を余儀なくされた京都は、欧米技術を取り入れることで再建を図り、文明開化博覧会を開催。欧米の意匠をいち早く取り入れた独特の和洋折衷に、笠原氏の「京都は昔も今も、実は大変イノベーティブな街」という説明が実感できるだろう。

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    琵琶湖疎水 水路閣
    1888(明治21)年竣工。全長約93m、高さ約9m、14連アーチのレンガと花崗岩による、南禅寺境内にある水路橋。日本の近代土木工学の礎を築いた田邉朔郎が設計を担当した。着工時23歳という若さであった。今も琵琶湖からの水が流れ、その景観が観光名所となっている。2025年8月には国宝に指定された。
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    平安女学院大学 明治館
    1895(明治28)年、イギリス人建築家アレクサンダー・ネルソン・ハンセルが設計。19世紀にイギリスで流行した、赤レンガを剥き出しにした外観に、オランダ由来の妻壁(ダッチ・ゲーブル)を組み合わせたユニークな建物。砂岩による白い帯状の装飾が施され、オランダ風の曲線屋根も特徴的だ。2003年から5年間の補強工事を経て、昔の暖炉や階段を残しながら同大学の教育施設として改修。国登録有形文化財。画像提供:学校法人平安女学院
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    聖アグネス教会
    1898(明治31)年竣工。京都最古のひとつである教会建築。米国聖公会宣教師で建築家のジェームズ・マクドナルド・ガーディナーによる、赤レンガ造ゴシック様式聖堂で、三層の鐘楼を備え、尖塔アーチやバラ窓が特徴。内部では30枚以上の美しいステンドグラスが見られる。週末には礼拝が行われている。京都市指定有形文化財。
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    京都市武道センター(旧武徳殿)
    1899(明治32)年竣工。松室重光武による設計で、日本最古の演武場である武徳殿を核とした総合武道施設。伝統的な和風建築の外観を見せるが、天井裏でヨーロッパ由来のトラス構造が屋根を支えるモダン建築の一つである。戦後にGHQに摂取され、大学施設としても利用されていたこともある。1980年代に大修復・増築を行い、現在は武道に加え、卓球など、室内スポーツ施設が拡充された。重要文化財。
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    ハリストス正教会
    日本最古のロシア・ビザンティン様式を基調とした大型木造聖堂。1903(明治36)年、松室重光がロシア宗務局承認設計図譜に基づいて設計を手掛けた。上部に八角形の鐘楼、タマネギ形ドーム屋根に十字架を掲げ、週末には礼拝が行われている。京都市指定有形文化財、重要文化財。
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    京都府庁旧本館
    1904(明治37)年竣工。京都府技師として数多くの建築物を手掛けた松室重光による設計で、壮麗なネオ・ルネッサンス様式、左右対称の構成、マンサード屋根が特徴。現役の官公庁建築としては日本最古のもの。1971年まで京都府庁の本館であった。現在も執務室として使用する傍ら、イベント会場としても使われている。重要文化財。
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    旧御所水道ポンプ室
    琵琶湖から京都御所に防火用水を送るため、宮廷建築家の片山東熊らが1912(明治45)年に建設。赤レンガを基調に円柱付きバルコニーなど重厚なデザインが印象的だ。1949年に京都市に移転、1987年まで浄水場として活用されていたが、1987年には休止となった。国登録有形文化財(重要文化財指定見込み)。
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    大谷大学 尋源館
    1913(大正2)年に須藤勉・山本八太郎らが設計した洋風の赤レンガ建築で、ファサードの花崗岩や白大理石が美しい。中央の小塔を中心としたシンメトリーな構造になっている。大学の本館として学長室などがあったが、1982年に大改修を行い、尋源館と命名。現在は教室として活用されている。登録有形文化財。
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    祇園甲部歌舞練場
    1913(大正2)年竣工。京都・祇園甲部の芸妓らの専用劇場で、ヒノキ材を用いた木造2階建ての純和風劇場。毎年春に上演される舞台公演「都をどり」の会場としても知られる。大改装を経て、現在は耐震構造となった。茶室や日本庭園などを併設し、「祇園花街芸術資料館」として京都の花街文化も体感できる。国登録有形文化財。
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    旧村井銀行七条支店
    煙草王と言われた村井吉兵衛の村井銀行として1914(大正3)年、吉武長一が設計。レンガ造りの二階建てで、円柱4本が並びギリシャ神殿のような古典様式だが、セセッション風の装飾も見られる。昭和金融恐慌で金融会社の手に渡り、昭和後期には飲食店になった。金庫などを残しながら、現在はギャラリーとして活用されている。
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    五龍閣(旧松風嘉定邸)
    清水焼窯元で実業家の松風嘉定の住居として、1920(大正9)年頃に武田吾一が設計。木造3階建ての洋館で、内装は19世紀末からウィーンで始まった新しい芸術運動「セセッション」の影響を受けている。2009年に竹下夢二をテーマにした「夢二カフェ五龍閣」を開業、2024年に「CAFE五龍閣」としてオープン。大正ロマン風情が人気だ。国登録有形文化財。
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ラグジュアリーとは何か?

ラグジュアリーとは何か?

それを問い直すことが、今、時代と向き合うことと同義語になってきました。今、地球規模での価値観の変容が進んでいます。
サステナブル、SDGs、ESG……これらのタームが、生活の中に自然と溶け込みつつあります。持続可能な社会への意識を高めることが、個人にも、社会全体にも求められ、既に多くのブランドや企業が、こうしたスタンスを取り始めています。「Nileport」では、先進的な意識を持ったブランドや読者と価値観をシェアしながら、今という時代におけるラグジュアリーを捉え直し、再提示したいと考えています。