リバーサイドの記憶
青森・奥入瀬渓流のほとりに立つ奥入瀬渓流ホテル。十和田湖から流れ出す渓流は、森の中を全長14キロにわたり清らかな水が走り、大小さまざまな滝が点在する景勝地である。秋には流域のブナやカエデが色づき、錦秋の世界が広がる。
客室の窓からは紅葉が水辺を彩る景色を望め、テラスに出ればせせらぎの音が心地よく響く。館内には岡本太郎の作品を配し、自然とアートが共鳴する空間を生み出している。
食事は青森の食材を使ったフランス料理で、銘醸ワインとともに旬の味覚を堪能できる。食後には八甲田山から湧く温泉に浸かり、心身をゆったりと解きほぐしたい。
秋の奥入瀬を楽しむなら「奥入瀬の滝さんぽ」がおすすめ。渓流沿いには14本の滝があり、落葉が進む季節には名瀑の姿がくっきりと見え、晩秋ならではの静けさを味わえる。
奥入瀬渓流ホテルは、自然をただ観賞するだけではなく、紅葉と渓流の風景が五感に深く刻まれる宿である。まさに錦秋を体現するひとときとなるだろう。
奥入瀬渓流ホテル by 星野リゾート
青森県十和田市奥瀬栃久保231
TEL050-3134-8094
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窓外に渓畔林を望むラウンジには、岡本太郎が手掛けた大暖炉「森の神話」が鎮座する。鳥、きのこ、森の妖精を表現した、生命力あふれる作品だ。館内には他にも同氏の作品が展示されているので、散策がてら探してみるのもよいだろう。 -
旬の食材を生かしたフレンチレストラン「Sonore（ソノール）」では、渓流を眺めながら食前酒とアミューズを味わうアペリティフから食事が始まる。 -
渓流を間近に望む露天風呂は、八甲田山から湧き出る温泉。清流のせせらぎや鳥のさえずりに耳を澄ませ、心地良い風に吹かれながら湯に浸かる時間は、至福のひとときだろう。 -
120平米の渓流スイートルームは、渓流と紅葉を堪能できる客室温泉付き。ベッドルームには本物の苔を用いた壁画を飾るなど、随所にこだわりが見られる。
紅葉の揺らぎ
今年開業5周年を迎えたザ・リッツ・カールトン日光は、栃木・奥日光の中禅寺湖畔にたたずむ。標高約1200メートルの中禅寺湖と男体山を望むロケーションは四季折々に表情を変え、とりわけ紅葉の頃は格別である。
湖畔の木々が鮮やかに色づき、水面に映り込む様は息をのむ美しさだ。客室はすべて中禅寺湖または男体山に面し、窓辺に立てば紅葉に抱かれるような景観が広がる。
和の美意識を取り入れた静謐な館内では、日光湯元温泉の源泉を引いた温泉を楽しめる。露天風呂から眺める、紅葉に彩られた湖の景色は格別で、ここならではの贅沢といえる。
温泉の後は栃木産食材を使った料理を。秋には地元野菜をふんだんに使い、華やかで滋味あふれる皿が並ぶ。窓外の紅葉とともに味わえば旅の記憶に深く刻まれる。
世界的ブランドのホスピタリティーと日本の自然美が融合したこの地で、紅葉の湖畔に身を置けば、日常を忘れる上質な時間が流れるだろう。
ザ・リッツ・カールトン日光
栃木県日光市中宮祠2482
TEL0288-25-6666
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紅葉に彩られた中禅寺湖と男体山が美しい奥日光。自然豊かな日光国立公園内にあるザ・リッツ・カールトン日光では、見事な景色を眺めながら洗練された空間で贅沢な休日を堪能することができる。 -
中禅寺湖に面した客室からは、鮮やかな紅葉に染まる湖畔の景色が広がる。窓辺のソファに身を委ね、ゆったりと穏やかな時間を過ごしたい。 -
ザ・リッツ・カールトンブランドで初の温泉は、日光湯元温泉の源泉から湯を引いている。四季折々の自然を映す露天風呂で癒やしのひとときを。 -
ダイニング「日本料理 by ザ・リッツ・カールトン日光」では、栃木ならではの旬の厳選食材を使用した伝統的な会席コース料理が供される。
森に還る刻
深山幽谷に囲まれた明神館は、標高1050メートルの扉温泉に位置し、神々が住まうと伝わる森の中に立つ。1931年の創業以来、四季の移ろいとともにゲストを迎えてきた。
秋には周囲の山々が美しく色づき、この季節ならではの静かな表情を見せる。客室は花や能の演目の名前が付けられ、2019年のリニューアルでより自然を身近に感じる空間が生まれた。
温泉は露天風呂や立ち湯など多彩で、渓谷の景色を目前に望む。川のせせらぎや鳥の声に耳を傾けながら、湯治に訪れたとされる温泉に浸かれば、悠久の時の流れに包まれる。
明神館の料理は、ルレ・エ・シャトー加盟の確かな質。自家畑の野菜や信州の旬の食材を使った料理は「地産地消のエスプリ」に満ち、滋味豊かな一皿が並ぶ。
白樺原生林の記憶を宿すラウンジやサロンでは、柔らかな光が差す静謐な空間の中で、本来の自分と向き合う時間が広がる。滞在はより豊かなものとなるだろう。
扉温泉 明神館
長野県松本市入山辺8967
TEL0263-31-2301
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わさび沢の渓谷に向かって開かれた立ち湯「雪月花」。立ち姿勢で腰上まで浸かる立ち湯は、循環器を整え血行を促進してくれるという。この他にも露天風呂付き大浴場「白龍」と寝湯「空山」があるので、心ゆくまで温泉を堪能したい。 -
1931年に湯治場として開業した明神館。天照大神の岩戸伝説に由来するとされる扉温泉に位置し、豊かな自然の力で心身を解放できる宿としてゲストを迎える。 -
八ヶ岳中信高原国定公園内に立ち、壮大な自然に囲まれた明神館の「然 白樺」。露天風呂のあるテラスを含めると160平米もの広々とした客室だ。 -
落ち着いた雰囲気が漂うロビーでは、528Hzのオリジナルの曲が静かに流れる。宿にはこのようにゲストがくつろげる居場所が多く点在している。
静謐の贅
石川・山代温泉の「べにや無何有」は、「無何有＝何もないこと」を思想とし、「からっぽの中の豊かさ」を理念とする宿である。約3000坪の敷地には山庭と呼ぶべき風景が広がり、建物は山の斜面に沿って自然と調和している。
客室の窓外には木々が枝葉を伸ばし、秋には美しく色づく。室内外の境界が曖昧になるような空間で、静謐な時間に身を委ねたい。
温泉は霊峰白山の伏流水をたたえる名湯で、山庭を眺めながら湯に浸かれば心身が癒される。全客室に露天風呂を備え、いつでもプライベートに温泉を堪能できる。
料理は加賀の旬を映した会席で、秋には蟹や松茸、加賀野菜が彩る。山庭を望むダイニングで味わう一皿は紅葉と響き合い、季節の余韻を宿す。
べにや無何有は「何もないこと」に豊かさを見出す思想と重なり、訪れる人を深く癒す宿である。
べにや無何有
石川県加賀市山代温泉55-1-3
TEL0761-77-1340
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95～100平米の広々とした露天風呂付き和洋室エグゼクティブスイート。畳敷きの本間と、竹敷きや土間の広縁、障子で仕切られたベッドルームを備えた客室で、窓の外には伸びやかに生い茂る山庭の木々が眺められる。 -
露天風呂付き和洋室エグゼクティブスイートの露天風呂からも山庭を堪能できる。木々が美しく色づいた紅葉の季節に、ゆっくりと湯に浸かる時間は格別だ。 -
ダイニング「懐石方林」では加賀ならではの旬の食材を生かした料理を供する。写真は秋の献立から前肴「加賀橋立漁港より 香箱蟹 琥珀ゼリー」。 -
趣の異なる三つのライブラリーを用意。どこにいても自然を身近に過ごせる宿で、お気に入りの本を見つけてみては。写真はフォレストライブラリー。
時を忘れる瞬間
京都・鷹峯の森に抱かれるように佇むアマン京都は、約2万4000平米の敷地を有するラグジュアリーリゾート。苔むす石畳や杉木立の間に建物が点在し、秋には庭のもみじが色づき、美しい景観を描く。
客室は日本旅館の伝統をモダンに昇華した空間で、窓外には森が広がり、秋の彩りが映り込む。静寂の中、紅葉の移ろいを眺めていると時が止まったような感覚に包まれる。
アマン・スパでは天然温泉の露天風呂で紅葉に染まる木立を仰ぎ、森と一体となる深い癒しを得られる。
食事は松茸や京野菜など秋の味覚を生かし、器や盛り付けにも季節が映る。窓外の紅葉とともに味わう一皿は鮮烈な印象を残す。
アマン京都の紅葉は喧噪から離れた森で静かに深まり、心を映す鏡のように迫ってくる。ここで過ごす秋は、時を忘れる贅沢な滞在となる。
アマン京都
京都府京都市北区大北山鷲峯町1番
TEL075-496-1333
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鷹峯三山のふもとにある森の庭にたたずむアマン京都。市内の喧騒から離れた静謐な空間は、まさに別世界。美しく色づいた紅葉を眺めながら、サンクチュアリのようなホテルで贅沢な時間を堪能してほしい。 -
アマン・スパでは、心身のバランスを図るためのさまざまなトリートメントやプログラムを用意。ミネラル豊富な天然温泉には、露天風呂と内湯がある。 -
日本旅館の伝統を踏襲しながらモダンに昇華させた客室。自然光に満ちた鷹ヶ峯スイートは、和室を有する1ベッドルームスイート。 -
アマン京都の中心にあるオールデイダイニング「ザ・リビングパビリオン by アマン」では、イノベーティブ料理を提供。ガーデンテラスからは美しい庭を一望できる。
風景の余韻
竹林亭は佐賀・武雄の御船山楽園にある隠れ宿。約15万坪の敷地に庭と宿が広がり、「庭屋一如」の思想を体現している。
秋には庭が錦織りなす紅葉で彩られ、池越しの風景や散策路、客室からの眺めが風雅な絵画のように映る。苔庭を縫うように伸びた枝先が染まり、訪れる者を誘う。
客室は全11室で、露天風呂や月見台、専用散策路を備えるなど、それぞれ趣が異なる。武雄温泉は約1300年の歴史を誇り、美人の湯として知られる。露天風呂や客室露天風呂から紅葉を眺めれば、自然と一体となる至福の時間が訪れる。
料理は佐賀の旬を織り込み、京風懐石の手法を取り入れた竹林懐石。盛り付けには庭や季節の演出が行き届き、山の幸が彩る一皿は風景そのものを味わうかのような喜びをもたらす。
静謐な宿で紅葉は庭と人をつなぎ、風の音と木のゆらぎだけが残る。全てが一体となる空間で、心身をゆっくり癒やしてほしい。
御宿 竹林亭
佐賀県武雄市武雄町武雄4100
TEL0954-23-0210
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約15万坪もの敷地を数十万本もの木や花が彩る御船山楽園。紅葉の名所としても知られ、秋になると多くの人が訪れる。そんな敷地内にひっそりとたたずむのが竹林亭だ。まるでそこだけ別世界のように静謐な時間が流れる。 -
客室から直接御船山楽園まで散策に出掛けられる和洋室「石楠花」は、月見台付きの人気の角部屋。温泉小屋のような展望露天風呂も用意されている。 -
客室で供される食事は、地元の旬の食材を贅沢に使用した懐石料理。器や盛り付けはもちろん、客室のしつらえにまで心を行き届かせた献立となっている。 -
宿泊者は御船山楽園の萩野尾御茶屋で営業する「茶屋バー」も利用可能。夜になると幻想的に浮かび上がる紅葉を眺めることができる。
※『Nile’s NILE』2025年11月号に掲載した記事をWEB用に編集し、掲載しています。
