走れロメロ! BRITTO KARUIZAWA

この春、そのコンセプトストア「BRITTO KARUIZAWA」をオープンしたのが、日本で唯一のロメロ・ブリット公式代理店を運営する鈴木洋樹さんだ。活動を手伝う息子・洋太さんと共に、ロメロの人物像を語ってもらった。

Photo Satoru Seki  Text Mizuki Ono

この春、そのコンセプトストア「BRITTO KARUIZAWA」をオープンしたのが、日本で唯一のロメロ・ブリット公式代理店を運営する鈴木洋樹さんだ。活動を手伝う息子・洋太さんと共に、ロメロの人物像を語ってもらった。

走れロメロ! BRITTO KARUIZAWA
(左)鈴木洋樹(すずき・ひろき)
1949年生まれ。ホープベアー創業者・会長、シルバーベル会長。画商として、ヒロ・ヤマガタやトレンツ・リャド等、多くの作家を世に送り出す。2020年より、ロメロ・ブリットの日本でのプロモーションを本格的に再開。

(右)鈴木洋太(すずき・ようた)
1999年生まれ。学生時代を海外で過ごす。その語学力を生かして国内外のプロジェクトを担当し、ロメロの通訳としても活動。父の事業を引き継ぐべく修業中。
「BRITTO KARUIZAWA」前にて。

軽井沢駅からほど近く、昔ながらのお土産店が並ぶ旧軽井沢銀座通りを歩いていると、ひとつの建物が目をひく。ガラス越しに見えるのは、カラフルな雑貨や絵画だ。この特徴的な作風を目にしたことがある人も多いのではないだろうか。

「ロメロ・ブリットは、鮮やかで大胆な色彩、パターンで知られる世界的アーティスト。歴史上最もライセンス化され、最も多く収集されているアーティストとも言われています」

教えてくれたのは、日本で唯一のロメロ・ブリット公式代理店を運営する鈴木洋樹さん。彼が、銀座に1店あったギャラリーを拡張する形で、ロメロ・ブリットのコンセプトストア「BRITTO KARUIZAWA」をオープンしたのだ。

鈴木さんとロメロの出会いは、1990年。アメリカのアートフェアに参加した際、取引先のギャラリーに、作家としてデビューしたての頃のロメロを紹介されたのだという。絵がいいし、人柄もいい。鈴木さんはすぐに取引を開始し、日本での個展も行った。しかし、95 年の阪神・淡路大震災で、淡路島にオープンを予定していた鈴木さんのミュージアムが被災。その影響は甚大で、97年にはロメロのプロモーションも中断することになってしまった。

「その時、冗談みたいにロメロが言ったんですよ。『洋樹は経営を立て直しなさい。僕もその間にアート活動を頑張るから。元気だったら20年後に会おう』って」

鈴木さんはそれから20年間辛酸をなめたが、転機が訪れた。2017年、ロメロから電話が入ったのだ。

「自分は約束通り、欧米もアジアも多くの国に活動範囲を広げて成功した。でも日本だけは、洋樹がいるから手を出さなかった。まだ僕のプロモーションをしてくれる気はあるか」

ロメロは20年前、まだ年若い自分を見いだしてくれた鈴木さんを忘れていなかったのだ。

「貧しい家庭環境で育ち、キャンバスが買えず新聞紙に絵を描いていた時期もあったロメロですから、何か思うところがあったのかもしれません。僕の苦しい状況を知ったロメロは、自身の絵の原画を何枚も送ってくれました。これを売って食いつなげと。それを機に、ロメロのパートナーとして再スタートすることになったのです」

鈴木さんは昨年、伊勢丹新宿店、阪急うめだ本店でロメロ ブリット展を開催し、大成功。活動を手伝うのは息子・洋太さんだ。

「絵だけでなく、僕はロメロの人柄にほれているんです。友人でもあるロメロが頂点へ上り詰める手伝い、『BRITTO KARUIZAWA』はその新たな一歩です。しかもそれを息子が手伝ってくれるのだから、これ以上のことはありません」

洋太さんも、父を見てほほえむ。「実際にロメロさんの人間性に触れて、何度もお会いするうちに彼の力になりたいという気持ちが強まりました。より多くの人にロメロさんを知ってもらえるよう、これからも父と共に頑張りたいです」

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    「エリートだけでなく、多くの人身近にアートを」という方針から、ロメロの作品は数多くグッズ化されている。ブリット・コンセプトストアでは、彼のデザインが取り入れられた洋服やアイテムを購入することもできる。
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    ギャラリースペース。「自分の作品で多くの人をハッピーにしたい」というロメロの作品は、見ているだけで明るい気持ちになれる
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    〈PERNAMBUCANA〉(2014年版画制作)若き頃の情熱に溢れた作品。
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●BRITTO KARUIZAWA
TEL 0267-46-9920

※『Nile’s NILE』2025年6月号に掲載した記事をWEB用に編集し、掲載しています

ラグジュアリーとは何か?

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