見どころは、ディオールでのデビューから「イヴ・サンローラン」でのキャリアのスタート、02年の引退まで40年余りのデザイナー人生を網羅したオートクチュールのルック110体。ジャンプスーツやサファリ・ルックなど、紳士服のカットの美しさや実用的な側面を残しつつ、女性らしいエレガントなシルエットを生み出し、時代に与えた衝撃と興奮を、展示を通して追体験することができる。
その作品は、織工や染色、刺繍、金細工などの熟練職人たちとの信頼関係によって実現されたものだ。厳格なまでの完璧主義者で、完成させるまでに数百時間をかけたといわれる作品は、見る者の五感に圧倒的な力をもって訴えかける。彼は優れた想像力によって、読書や美術作品の収集を通してアフリカやロシア、スペイン、アジアなどへ空想の旅に出かけ、そこで得たものを異国情緒あふれる極彩色のガウンやケープなどに反映させた。