森に興じる“造園雀”

片や富山に本社を置く造園業・越路ガーデンの3代目、西尾耀輔さん。片や「ワイルドサイエンティスト」こと在野の生物学者、片野晃輔さん。veigは、ありそうでなかったこのユニークな組み合わせから生まれた造園ユニットだ。二人の目には庭という森の小宇宙がどのように映じているのだろう。

Photo Masahiro Goda. Hiroki Tagawa  Text Junko Chiba

片や富山に本社を置く造園業・越路ガーデンの3代目、西尾耀輔さん。片や「ワイルドサイエンティスト」こと在野の生物学者、片野晃輔さん。veigは、ありそうでなかったこのユニークな組み合わせから生まれた造園ユニットだ。二人の目には庭という森の小宇宙がどのように映じているのだろう。

veig、「Tanikawa House」の窓外に広がる庭を手掛ける
「Tanikawa House」の窓外に広がる庭を手掛けた。メンバーみんなで笑いながら「表現されたものの背景に何が語られているのか。何の上に成り立った表現なのか」を議論し、試行錯誤を重ねて完成させたという。題して「表裏の庭」。
Photo Hiroki Tagawa(nando inc.)

造園ユニットを発足

そして初めての仕事が北軽井沢の「Tanikawa House」。1947年に谷川俊太郎が一編の詩を建築家の篠原一男に託して建てられた別宅の庭を手掛けた。
以後も個人の住宅や別荘を始め、富士フイルムのデザインセンターCLAYスタジオ新社屋など、スケールの異なる庭で着々と実績を重ねている。

ただ彼らには“本業”があり、受けられる仕事はそう多くない。しかしだからこそ大切にしていることがある。
それは「互いの気持ちが『深くわかり合える』ところまで、コミュニケーションを重ねる」ことだ。

「まるっと『いい庭を造ってね』ではなく、庭に何を望み、何を表現したいのか、施主の思いを引き出しながら庭造りを提案していきたい」と片野さん。施主は共同設計者だと捉えている。

林業的な花壇

そんな彼らが取り組んだ庭の中でもユニークなものの一つに「林業的な花壇」がある。0.2×3mくらいの小さなベランダの花壇だ。

「林業従事者だった方からの依頼であったことから『木を伐る、つまり生き物を殺すことをお子さんに経験して欲しい』と思い設計しました。
それで僕らは植林用の苗を100本くらい植えたんです。伐ることが前提です。まわりの植物たちが生きるために、どの木を伐るかを考えてもらう。判断基準は好きな花を残したいでも、自分の望む景色を獲得するためでも、何でもいい。教育的な庭として、森や生態系を考えるきっかけになりますよね」と西尾さん。

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ラグジュアリーとは何か?

ラグジュアリーとは何か?

それを問い直すことが、今、時代と向き合うことと同義語になってきました。今、地球規模での価値観の変容が進んでいます。
サステナブル、SDGs、ESG……これらのタームが、生活の中に自然と溶け込みつつあります。持続可能な社会への意識を高めることが、個人にも、社会全体にも求められ、既に多くのブランドや企業が、こうしたスタンスを取り始めています。「NILE PORT」では、先進的な意識を持ったブランドや読者と価値観をシェアしながら、今という時代におけるラグジュアリーを捉え直し、再提示したいと考えています。