二人の共通点
語り出したら止まらない。時には森に向かう車の中で、時には多摩川の土手に座って、時にはZOOM会議で、veigの二人はとにかく「しゃべりまくる」。自然環境や植栽など、仕事の話はもとより、何気ない一言をフックに、好きなこと、気になることなど、話題はピョンピョン飛ぶ。
「まじめ4割、ふざけ6割」、幅広く、奥深く、大量のコミュニケーションをするからこそ、最高の形で互いの思いを庭造りに紡いでいくことができるのだろう。
「今日みたいにビルの一室にいても、観葉植物を見ながら『山の上の方の岩場に近い環境だよね。コンクリートって、見方によっては山が形を変えただけだから、その景色をここに持ち込むのも面白そうだね』なんて話で盛り上がります」と片野さん。
柔軟な視点に驚かされる。言われてみれば、その通り。
二人の共通点は「自然環境をいろんな視点で楽しめること」だと西尾さんは言う。実際、軽井沢や福岡の離島、沖縄、京都など、方々にフィールドワークに出かける彼らは、まさに「都会から森に出てきた雀」のよう。自然に興じつつ、間断なく森にさえずりを響かせる。
二人で組む初めての機会
出会いは2年前の秋。片野さんが「既存のルールに乗らない科学者」として、新たなスタートを切った頃のことだ。
「生態系を人に伝える場として、庭の設計・施工に関わりたい」という思いを伝えた知人から、西尾さんを紹介された。
いろいろ話すうちに、「お互い物事を否定的に見ず、対立する考えがあっても折衷案を考え、可能性を模索しようとする。似てるよね」と、すぐに意気投合。
その半年後に片野さんの元に日本科学未来館の「セカイは微生物に満ちている」という展示の依頼が舞い込み、初めて二人で組む機会を得たそうだ。
「屋内の展示会場を林床に見立てて、本物の多様な植物で構成された庭を造るという方針の下、西尾さんにはその『変化する庭』の設計と施工に加わってもらいました」と片野さん。
一方、西尾さんは「ふつう、こういう展示では観葉植物を使いますが、それだとジャングルのイメージが強くなる。日本の森を再現しようと、外の暗い場所に生えている植物を使いました」と振り返る。
これが成功!
植物が持ち込まれた翌日からアリの行列が現れたり、キノコが生えたり、カブトムシが羽化したり、テントウムシがアブラムシを退治してくれたり。展示会場とは思えないほど豊かな植栽の世界が形成された。もちろん微生物の宝庫たる土も造られた。
この展示に二人は手応えを感じ、正式に造園ユニットを発足させたのである。