その名も「竃門」
まず向かったのは、宝満宮竃門(ほうまんぐうかまど)神社。主人公 竃門炭治郎(かまど たんじろう)の姓と同じ名を持つことから、ネット上で「もしかして作品のルーツ?」と話題になり、1年ほど前から参拝客が急増しているという。
私たちが訪れた日も、平日にもかかわらず、駐車場は満車。人気のほどがうかがわれた。
イメージがダブるのは、名前だけではない。例えば「鬼狩り」というモチーフがそう。
そもそも宝満山で神祭が行われた始まりは、今から1300年以上も昔、天智天皇の御代に遡(さかのぼ)る。
九州一円を統治する大宰府政庁が現在の都府楼跡の地に遷(うつ)された時、鬼門に当たる宝満山に鎮護のための神が祀(まつ)られたのだ。「鬼門」とは陰陽道で鬼が出入りするとされるところ。竃門神社はつまり、「鬼門封じ」の役割を担っていたわけだ。
また宝満山は古来、修験道で知られる「信仰の山」である。
山中にはかつて山伏たちが住んでいた坊や、修行をした窟(いわや)などの跡が遺(のこ)る。今もここで修行する山伏たちがいて、彼らがなんと、炭治郎の羽織と同じ市松模様の装束を着ているとか。
どうだろう、作者の吾峠呼世晴(ごとうげ こよはる)氏が福岡出身らしいことに加えて、これだけの共通点がそろうと、竈門神社には「鬼滅の聖地」を名乗る資格があるような気もするのだが……。
真相はともあれ、ここを聖地と信じて盛り上がるファンたちは思い思いに、『鬼滅』の登場人物のイラストを絵馬に描き、コロナのような、今の世に跳梁跋扈(ちょうりょうばっこ)するある種の鬼が退治されることを祈願する。