「絵画は詳しくないがクリムトは好き」という人も多いのではないだろうか。
金箔(きんぱく)の華やかさ、波型や円など多彩な柄を組み合わせた装飾、そして思わず引き込まれる官能的な女性の美。絵画というより工芸品を見ているような、あるいはデザイン性の極めて高いグラフィックを前にしているかのような、瀟洒(しょうしゃ)で洗練された魅力がクリムト作品の特徴だ。
「肖像画でも単なる人物表現ではなく、模様が絶妙に組み合わされていてすごく洒落(しゃれ) て見えます。クリムトが活躍した19世紀末のウィーンは、アールヌーボーやユーゲントシュティールが流行し、曲線や装飾性を生かしたデザイン性の高いものが好まれた時代なので、クリムトのこうしたセンスのよさがもてはやされたのでしょう」と東京都美術館の学芸員、小林明子氏は指摘する。