迸る“メグル・ブルー”

古くから時代や国を超えて存在する“筆跡(ブラシストローク)”の手法を用い、筆跡それ自体を立体的に表現した独自の作品を生み出す、現代美術家・山口歴氏。ニューヨーク・ブルックリンにアトリエを構え、ユニクロ、ナイキ、イッセイ ミヤケなど多数のブランドとコラボレーションする気鋭のアーティストだ。

Text Rie Nakajima

古くから時代や国を超えて存在する“筆跡(ブラシストローク)”の手法を用い、筆跡それ自体を立体的に表現した独自の作品を生み出す、現代美術家・山口歴氏。ニューヨーク・ブルックリンにアトリエを構え、ユニクロ、ナイキ、イッセイ ミヤケなど多数のブランドとコラボレーションする気鋭のアーティストだ。

山口歴 作品
伝統的な手法である“筆跡(ブラシストローク)”を用い、立体となったのがOUT OF BOUNDS(アウト・オブ・バウンズ)シリーズ。この作品「SOULFLIGHT」は、ストリートアートのグラフィティ/タギング(街中にスプレーペンキで描かれた落書きの一種)の線の動きを集めてリサーチし、それを解体して再構築している。

筆跡(ブラシストローク)をカットしてコラージュさせていく、“カット&ペースト”と呼ばれる独自のスタイル。キャンバスを飛び越え、立体的に表現された筆跡が、高く評価される鮮烈な色彩感覚とあいまって、他の誰にもまねできない先鋭的な個性を生み出す。彫刻とも絵画とも異なるその作品は、実物と対峙(たいじ) して初めて、迸(ほとばし)るようなエネルギーと研ぎ澄まされた感性に全身が麻痺(まひ)するような衝撃を覚える。

山口歴
山口歴(やまぐち・めぐる)
1984年東京都生まれ。現在はニューヨーク・ブルックリンを拠点に、ブラシストロークによる手法で、キャンバスにコラージュする独自のスタイルを武器に活躍している。

山口歴氏はニューヨーク・ブルックリン在住の日本人アーティストだ。出身は東京都渋谷区。両親ともにファッションデザイナーという家庭に生まれ、ファッションやアートを常に肌で感じながら育った。

幼い頃から絵を描くのが好きで、絵画教室にも通っていたという。いわばサラブレッドの生まれだが、アーティストとしては挫折を知らないエリート、というわけではない。進学にあたり、東京藝術大学を目指すも4浪。苦悩の中、2007年に旅行で訪れたニューヨークでクリスティン・ベイカーの作品を知り、日本のアカデミックなアプローチとは180度異なる、自由なアートの世界に開眼する。そして右も左もわからぬまま渡米した。

1 2
ラグジュアリーとは何か?

ラグジュアリーとは何か?

それを問い直すことが、今、時代と向き合うことと同義語になってきました。今、地球規模での価値観の変容が進んでいます。
サステナブル、SDGs、ESG……これらのタームが、生活の中に自然と溶け込みつつあります。持続可能な社会への意識を高めることが、個人にも、社会全体にも求められ、既に多くのブランドや企業が、こうしたスタンスを取り始めています。「NILE PORT」では、先進的な意識を持ったブランドや読者と価値観をシェアしながら、今という時代におけるラグジュアリーを捉え直し、再提示したいと考えています。