
今では当たり前のように使われているが、インフルエンサーという言葉は20年前までほとんど使われていなかった。
元は主にSNSなどで発信し、世間に影響を与える人たちのことで、ビジネスとして情報発信する人を指したが、昨今では情報を発信するアマチュアも含めてインフルエンサーと呼んでいるようだ。
つまりはプロもアマも含めてのインフルエンサーだから、非常に紛らわしい。いわゆるステルスマーケティングを見つけにくくなったのである。
今やインスタグラムの投稿には、おびただしい数のグルメ情報が氾濫(はんらん)し、おいしい店の話がSNS上に飛び交っている。
その多くはアマチュアのブロガーなどの、ほほえましい外食体験の記録で、まさに玉石混交。なかには気になる店もあるが、わざわざ全国チェーンなど載せなくても、と苦笑することもある。
まぎらわしいのは、食をビジネスとしている人たちのSNSである。主にメディアで活躍する、グルメと呼ばれる人たちが、SNSで投稿する外食体験は、はたして純粋なものか、はたまた俗に言う店宣伝なのか、ほとんど見分けがつかないのである。
外食を趣味として、多くの店を食べ歩き、それをSNSで紹介するだけにとどまらず、プレオープンだとか内覧会に出向き、その様子を投稿するようになると、それはもう店宣伝でしかないのだ。
たとえ無報酬であったとしても、タダ飯を食らい、ときには土産までもらった時点で、その投稿が公平性を欠くのは間違いない。もしも好みに合わない店だったとしても、タダで食べさせてもらって、批判するわけにはいかない。ほめるしかないだろう。
しかし純粋無垢(むく)な読者は、みじんも疑うことなく、「うわー、素敵な店ですね。わたしも行ってみたいです!」
とコメントを寄せる。
こういう話が今やSNS上であふれかえっている。