「これは偶然だ」と思うことなかれ。今回の株価の暴落を通じて一番ダメージを食らったのは、「団塊ジュニアの世代」近辺であるはずだからだ。それより年齢が上の世代はいわば「逃げ切り世代」であり、資産にも余裕がある。他方でそれより若い世代はまだ働くことができるので何とでもなるのである。だが、もはや50代半ばとなりつつある「団塊ジュニア」たちには後がない。リスキリングだと言われても今さら、AI、それに文理融合人財になど転じることができるはずもないのだ。それなのに今回の株価暴落で「虎の子」を失ったというわけであり、もはや救いようもなくなっているのが実情だろう。
「このままだと我が国は近未来に存続すらしなくなってしまう」と正直、私は思っている。だからといって、もう「団塊ジュニア世代」以上を啓発し、動かすというのは時間切れだとも思うのである。今年(2025年)はその意味でも後がないのであって、ここからは明確に若い世代に対して「我が国のあるべき姿」を文理融合の観点から徹底して教育することに全身全霊を私自身は捧げていきたいと思っている。その銅鑼が、この世界同時株安であったと私は信じてやまない。
原田武夫 はらだ・たけお
元キャリア外交官。原田武夫国際戦略情報研究所代表(CEO)。情報リテラシー教育を多方面に展開。2015年よりG20を支える「B20」のメンバー。
※『Nile’s NILE』2025年6月号に掲載した記事をWEB用に編集し、掲載しています