
原田武夫著/中公新書ラクレ(現在品切れ・重版未定)
かつて『サイレント・クレヴァーズ 30代が日本を変える』という新書を出したことがある。訳せば「静かなる賢者たち」ということになるが、我が国における団塊ジュニア世代こそが、我が国再興の礎になるという内容だ。私自身、この世代に属しているが、30代前半の頃に上梓(じょうし)した。しかし結果は惨憺(さんたん)たるものであった。読売新聞にて書評が簡単に掲載されたが、それ以外は全く関心を寄せられなかった。重版もかかることがなく、今や古本屋の片隅に並べられる本になっている。
「団塊ジュニアの世代」は50代を迎えつつある。その親に相当する「団塊の世代」が我が国の高度経済成長、そして平成バブルの中で我が世の春を謳歌(おうか)してきたのに対して、いつも割を食ってきた世代だ。人数こそ多いものの、なぜかマスメディアは常にこの世代をスキップし、一方では「団塊の世代」をハイライトし、他方では「ミレニアム世代」「Z世代」に注目してきた。「団塊ジュニアの世代」はといえば学生時代に「国際化」の波が到来し、「英語を学ぶか否か」の選択を迫られた。そして社会人になろうとすると「就職氷河期」が襲ってくる。それを何とか逃れて就職できたとしても、次に「グローバル化」「IT化」が襲ってきて、これに適応できるかどうかという試練に出くわした。もちろん巧みにこれらの大波を乗りこなして成功をつかんだ人たちもいるが、肌感覚では9割以上の方々がこの波にのみ込まれてしまった。
そしていよいよ「団塊ジュニアの世代」はまたぞろ壮年期も半ばを迎えたというわけなのである。するとソーシャルメディアでこんな揶揄(やゆ)する声が徐々に聞こえてきているというわけなのだ。「高い給料をもらっているあのおじさん・おばさん社員、英語一言も話せないんだって」
「生成AIどころか、IT、いやメールですらまともに操作できないだろ、あの人たち」
「それでいて“あぁしろ”“こうしろ”と上から目線。フラットな組織がはやりだというのに、全くもって昭和から抜け出せていない」
「あの、何かというと飲みニケーションに持ち込もうとする日頃の態度、何とかなりませんか?」