私はこれを聞いてすぐさま切り返した。「素晴らしいアイデアだが、申し訳ない、率直に言って中国だけがその方向で努力しても我が国の側は必ずや中国共産党による策謀だと拒否するだろう。何らかの形で中和剤となる第三国を絡ませないといけないと思う」。
「そう、正にそうなのです」―同氏は全くもってそうだ、といった顔をしつつ、言葉を次いだ。ここから先はコンフィデンシャルなのでこの場では披歴(ひれき)することがかなわないが、結論を言うならば、至極納得できる担保をすでに思案済みであったようだ。その言葉を聞いて、「これはうまくいけば東アジアの大義にかなう大きなプロジェクトになる」と私は率直に言って感じた。そして弊研究所で何か出来ることがあれば何でも言って欲しいと言っておいた。
「トランプVersion2.0」の時代がいよいよ到来する。その攻撃の矛先は何よりも中国であると最初から言われている。しかしそのことをものともせず、北京のトップレベルに生きる友人たちは次元の違う戦略を持っている。それを知らないのは我が国だけだ。本当に……ニッポンは危ない。このままでは。
原田武夫 はらだ・たけお
元キャリア外交官。原田武夫国際戦略情報研究所代表(CEO)。情報リテラシー教育を多方面に展開。2015年よりG20を支える「B20」のメンバー。
※『Nile’s NILE』2025年1月号に掲載した記事をWEB用に編集し、掲載しています