「合成の誤謬(ごびゅう)」という言葉がある。少し脚色して説明をするならば、「お互いに良かれと思ってしたのだが、それらが合わさった結果、かえって事態を悪くしてしまった」といった場合に使う言葉である。今回、全世界で起きているのは「民主主義」という不磨であるはずのルールを適用すればするほど、本当の問題の解決から人類社会全体が遠のいてしまっているという現実なのである。
しかし「民主主義」は第2次世界大戦におけるファシズム・全体主義に対する究極の兵器(lethal weapon)として語られ、これまで喧伝(けんでん)‘されてきたのである。まさかこれこそが問題の元凶なのだと今、誰が言うことができようか。
事ここに及んでしまってはやるべきことはただ一つ。「民主主義」という量の次元から、質の次元へとルールを変えることだ。しかしそれがどうやったらば可能なのか。いよいよ私たち人類がホモ・サピエンスから次の「ホモ」へと進化するに当たって課されている本当の試練は、そこにあるのかもしれない。
原田武夫 はらだ・たけお
元キャリア外交官。原田武夫国際戦略情報研究所代表(CEO)。情報リテラシー教育を多方面に展開。2015年よりG20を支える「B20」のメンバー。
※『Nile’s NILE』2024年10月号に掲載した記事をWEB用に編集し、掲載しています