令和版「白村江の戦い」が始まる

時代を読む 第126回 原田武夫

時代を読む 第126回 原田武夫

時代はさかのぼり663年。この年に東アジア全域を揺るがす動乱が発生した。「白村江の戦い」である。当時の中華帝国であった「唐」と朝鮮半島の王国・新羅(しらぎ)が結び、我が国とその同盟国である任那(みまな)を侵略してきた。両者は激突したが、我が国からの援軍も虚しく、後者は敗北。その後の東アジア秩序が唐中心となることが決定したという事件だ。ここでの敗北は我が国の国制に対して甚大な影響を及ぼした。天智朝から天武朝への転換がそれであり、ここで我が国の在り方は一変せざるを得なかったことを歴史書からは読み取ることができる。それもそのはず、現在の太宰府にあたる地域には勝者である唐からの使者が常駐し、そうした我が国の国制改革を監視していたとまでする研究もあるくらいなのだ。これは言ってみれば第2次世界大戦後、GHQ(連合国軍総司令部)の名で米国が我が国における占領統治を間接統治で行ったことにも似ている。とにかく大変な出来事だったのである。

「あの時」と「今」が全く同じである、といった乱暴な議論を展開したいわけではない。むしろ問題は実のところ、韓国勢が北朝鮮勢と手を結び、米国勢を巻き込むために我が国を必要としており、これら4カ国連合で育んだ経済的な組織体を、結果として「高値」で中国勢に売却しようというのが現在進行形の企てなのである。中国勢もどうやらこのことに気づいてはいるようだ。表向き、中国共産党の高官が平壌をわざわざ訪問し、「関係強化」をうたってはいる。しかし、北朝鮮勢はというと、表向きそれに迎合しつつも、その実、「PLAN B」というべきこの企ての実現のため、静かにトップダウンで動きを見せているのであって、しかもそこでは岸田文雄総理大臣がやろうとしている小泉訪朝以来のラインでの日朝問題の解決とは全く違うフレームワークの実現すら企図されているのである。

その実現のための道のりは険しい。だからこそ、今・ここで起きている歴史の推移から目が離せない。筆者もこうした企てを耳にした当事者の一人として、歴史の創造という偉大なる作業に今後とも関わっていこうとあらためて心を決めたところである。

原田武夫 はらだ・たけお

元キャリア外交官。原田武夫国際戦略情報研究所代表(CEO)。情報リテラシー教育を多方面に展開。2015年よりG20を支える「B20」のメンバー。

※『Nile’s NILE』2024年6月号に掲載した記事をWEB用に編集し、掲載しています

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