天文
おひつじ座の成り立ち
羊と人との関わりは古く、一説には8000年前までさかのぼるとされている。その頃、中央アジアや西アジアで牧羊が始まり、文明の発祥とともに羊は人々の暮らしにとって欠かせない存在になっていった。そして今からおよそ5000年前、西アジアのメソポタミア地方で高度な文明を築いた人々は、星を「天の羊」、惑星を「年老いた羊」と呼び、さらに特徴的な星々の配置を身近な事物の名前で呼ぶようになった。星座の始まりだ。
それから数千年、牧畜・農耕文明の発達とともに、人々は身近な動物や道具を星の配置に次々と当てはめながら、多彩な星座を作り出していった。そして、季節の移り変わりを知る手段として星座を用いるようになった。今から約3000年前の星座の記述があるムル・アピン粘土板文書には、おひつじ座は「雇われ農夫」の星座として記されている。意外にもおひつじ座にはその前身があるようだ。
星座がギリシャへと伝わり紀元前300年頃になると、幾多の星座神話とともにおひつじ座が誕生する。おひつじ座は黄道十二宮の中でも1番目に数えられる特別な星座だ。それはかつて春分点がおひつじ座にあったことに由来している。
ギリシャ神話では、おひつじ座になったのは金色の毛皮を持ち、空を飛ぶことができた羊とされている。この羊は人間を窮地から救った後、自らの毛皮をもその人間に差し出したという。なんと献身的な羊なのだろう。羊がこのような神話を通して星座になったのも、太古の昔から人々の生活を支えてきた羊への感謝の思い、畏敬の念の表れなのかもしれない。