そして我が国が「国連安保理常任理事国」になる日

時代を読む 第107回 原田武夫

時代を読む 第107回 原田武夫

時代を読む――原田武夫 第107回 そして我が国が「国連安保理常任理事国」になる日

「我が国がいよいよ国際連合の安全保障理事会で常任理事国入りする」—我が国において外交の世界に身を置いた者であれば誰しもが夢に見ていたことが、今現実になりつつある。先般訪日したバイデン米大統領がこのことについて明確なサポートを表明したことで明らかに流れが変わった。我が国外務省からすれば「もう少しで悲願達成」といったところであろうか。

そもそも「国連」とは英語でいうとUnited Nations、直訳すると「連合国」ということになる。戦後の我が国で知恵者がそれを「国際連合」と言い換えた。しかし、その本質はというと、我が国を始めとする「三国同盟」を敵国としてとらえ、それに対して戦いを挑む国々の集合体という点であることに違いはないのだ。事実、我が国は財政支援という側面で国連に対して多大なる貢献をしてきたにもかかわらず、安全保障理事会で絶大なる権力を持つ「常任理事国」となることがこれまではできなかった。なぜならば「旧敵国」だからである。

しかし、今年(2022年)になって発生した「ウクライナ戦争」で明らかに状況が変わった。ロシアは先の世界大戦における「戦勝国」であるが、「旧共産主義国」であるということから、西側各国より事実上の差別待遇を受け続けている。そこでプーチン露大統領は既存の国際的な枠組み、特にG7のフレームワークを崩壊させようと、ウクライナへの侵攻に打って出たのである。

ところがこれは「罠」だったのであり、英米らが特殊部隊要員を事実上、ウクライナに送り、大量の武器も供与する中、当初の目論見どおりの「圧勝」は夢のまた夢となった。むしろそこで生じたのは主要な国際的な枠組みからロシアを外すことであり、ついにはロシア自身が国連から追放されるのではないかという声すら聞かれるようになっているのだ。

国連安保理常任理事国も当然、そうした「ロシア追放」のスコープに入ってくる。とりわけ今後の戦況次第でロシアが「戦術核の使用」といった空前絶後の手段に訴えて出るようなことがあれば、もはや流れは決定的なものになるのだ。そうした中で「平和国家」であり、かつ「財政上の貢献度合いが圧倒的に高い国」ということで我が国がロシアによって空席となった「安保理常任理事国」の席に入ることに対して、真正面から反論する国の数はそうそう多くない可能性がある。

無論、ドイツやブラジルなど、同様にこの席を狙っていた諸国からすれば「なぜ私たちの国は選ばれないのか」ということになるであろう。

だが、このことが民主主義で選ばれたリーダーたちという意味での「政体」での判断を超え、血統だけで存続し続けてきた「政体」での決断を経たライン上の出来事であるとなると話は全く変わるのである。

ここで気になるのが中国の動きだ。ロシアと中国は実のところ「是々非々」の関係にあるのだが、中国からすればロシアに対する西側諸国によるこうした処断は「明日は我が身」であるだけにまずは絶対反対するに違いない。しかし、である。その肝心の中国自身が「内乱・騒擾により国家体制が4分割される」といった非常事態に程なくして見舞われるのであれば果たしてどうだろうか。中国にとってはもはやロシアなどどうでもよく、とにかく国内事
項に専念するあまり、結果として「反対票」をこの問題について投じない可能性があるものと私は考えている。

常任理事国になるということは五大国になること、すなわち「核兵器保有」を内外に対して表明することを意味する。しかしこれもまた反対勢力に対して、「同盟関係に基づく核兵器の共有を米国や英国などと行うだけ」と我が国の側がこれら西側諸国による合意の下、反論したならばどうか。これもまた核戦力を巡る現状維持の枠内での出来事という「表向きの整理」が背後において実質的な「調整」と同時に進められるならば、決して乗り越えられない壁ではないのである。

「悲願」の達成は近いのかもしれない。だが、問題は「歴史が二度繰り返されないようにすること」だ。そのことに今、私は頭を巡らせている。

原田武夫 はらだ・たけお
元キャリア外交官。原田武夫国際戦略情報研究所代表(CEO)。情報リテラシー教育を多方面に展開。2015年よりG20を支える「B20」のメンバー。

ラグジュアリーとは何か?

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