「昼行灯な倭国」というビジネスモデル

時代を読む-第28回 原田武夫

時代を読む-第28回 原田武夫

時代を読む――原田武夫 第28回「昼行灯な倭国」というビジネスモデル

グローバル社会では今、実にさまざまな出来事が起きている。そのような中で私たち日本人が普段、全く意識していない「根底に流れる潮流」がある。それは、今起きていることはとどのつまり、華僑・華人ネットワークのハイレベルがユダヤ勢(アシュケナージ)の振る舞いに「もう我慢ならない!」と憤激し、対抗措置をとることにしたことの表れだということである。

複雑なことは一切捨象して言おう。華僑・華人たちの歴史は王朝という意味でも実に4000年を超えている。一つの「文明」という意味では、そこまで長く続いてきたものは他にない。米欧の文明はというと、根底にあるユダヤやキリストといった流れであってもたかだか2000年余りなのである。

古く、長い歴史を持っている方が富を集めるチャンスをより数多く持つのは当たり前のことだ。だから華僑・華人ネットワークは私たち日本人が想像もつかない規模とやり方で莫大な富を貯め込んできた。19世紀半ばごろから、これの一部をユダヤ勢(アシュケナージ)に預け始めた。ユダヤ勢は当初、これを真面目に管理してきたが、ある段階から気付いたのだ。

「このカネは俺が管理している。ということは、持ち主も俺だし、これをどのように使おうが文句は言われないはず」

これが現在の金融資本主義の出発点にあって、彼らユダヤ勢が抱いた大いなる誤解なのである。彼らの刃はまずもって「本当の持ち主」である華僑・華人ネットワークを取り仕切る階層へと向かっていくことになる。「アヘン戦争」以降の世界史、とりわけアジア史をそういった観点で見ると、実によく理解できるのである。

このように言うと、「いや、そんなことはない。我が国こそが万邦無比な悠久の歴史を誇る国家なのではないか」と反論する読者がいるはずだ。だが、神話の世界ならばまだしも「文字に残された歴史」という意味でいうと、我が国がそのような主張をするのは甚だ難があるのである。

しかし私はだからこそ、「我が国の本当の始まり」にあらためて注目すべきだと考えている。なぜならばそこにこそ、これからの時代を私たち日本人が生き抜く知恵が潜んでいるからだ。

我が国の存在が中国の史書に初めて登場するのは3世紀末に記された『魏志倭人伝(ぎしわじんでん)』においてだ。有名な女王「卑弥呼」が登場し、時の中国王朝に対して臣としての服従の礼を示す。これに対して中国王朝の側は「愛(う)い奴」とばかりに親魏倭王の封号を与えるのである。そして、さまざまな褒美を与えた。

何げない記述ではある。だがその後、中国王朝の側は何度となく「革命」(王朝の交代)を経る中で、たくさんの人々が逃げなければならない目に遭い、その度に我が国へと避難してきたのである。そして我が国の側はこれを快く受け入れ、最大限の敬意をもって処遇した。

つまり華僑・華人ネットワークにとって我が国は「安全な逃げ場所(セイフヘイブン)」だったというわけである。事実我が国は常に「気のいい臣下」「昼行灯」を装い、避難してくる隣国からの貴人たちが大量に持ってくる文物、そして富を吸収し続けたのである。これはれっきとした我が国古来のビジネスモデルだったというわけなのだ。

このことを現代、華僑・華人ネットワークと格闘するユダヤ勢が見逃すはずもない。前者がやって来る前に、まずは自らの「セイフヘイブン」にしてしまえと動くはずだ。イスラエルによる最近の対日接近に、それは如実に表れている。

私たち日本人は打って出る必要などないのだ。「倭国」以来の昼行灯ビジネスモデルで構えていれば、いずれこれら二つから巨万の富が投げ込まれることになる。―こうした民族としての知恵を、「日本史への回帰」を語る時の宰相が最も無視し、徒手空拳で世界に出ようとしていることほど滑稽なことはない。そう思うのは、私だけだろうか。

原田武夫(はらだ・たけお)
元外交官。原田武夫国際戦略情報研究所代表(CEO)。
情報リテラシー教育を多方面に展開。講演・執筆活動、企業研修などで活躍。
https://haradatakeo.com/

ラグジュアリーとは何か?

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それを問い直すことが、今、時代と向き合うことと同義語になってきました。今、地球規模での価値観の変容が進んでいます。
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