最近、東京の繁華街を歩いていると、とみに思うことがある。「ガイジン」がとても大勢歩いているのだ。繁華街だけではない。新幹線のグリーン車に乗ると、これまた「ガイジン」だらけということがよくある。
「アベノミクスに吸い寄せられてきたのでは?」と思われるかもしれない。だが私が知る限り、彼らは「アベノミクス」そのものに関心はない。事実上の口先介入のような円安誘導と日本株高だと思っている。それに安倍晋三総理大臣が満面の笑みで行った「日本に投資してください」演説にしても、ロンドン・シティーでは大成功だったが、ウォール街での評判はからっきしだった。いや正直、前者の演説も「中身」は良かったものの、それによって対日投資が目に見えて増えたのかというとそうでもないのだ。
ところがここにきて、やたらと「ガイジン」がリアルに街で見かけられるようになったのだ。そのことの意味はとても大きい。なぜならば「ガイジン」、すなわち米欧の人々にとって我が国は、あまりにも遠く、しかも楽しいけれども言葉が通じないので、普通であれば「バカンスの場所」としても最後に選ぶからだ。それがこれだけ大勢来ているということは要するに、遊び目的ではないということなのである。
マーケットをウオッチする時、守るべき一つの鉄則がある。それは「街を歩くガイジンの数を見ろ」というものだ。観光客を除くガイジンたちは必ず我が国に目的をもって来ている。その数が明らかに増えているということは、我が国を巡り、彼らを引き寄せてやまない何らかの大きな理由が出現しているということを意味しているのだ。たいていの場合、そのことに私たち日本人は後から気づく。
2013年10月末もそうだった。私は英語ブログ(takeoharada.com)を書いている。これはあくまでもガイジンの友人たちとのコミュニケーション用に書いているので、日本の友人たちには原則として案内していない。とても面白いのがリアルタイムで閲覧者のいる場所が分かることだ。米国、英国からラトビアまでさまざまなのである。
そして10月末の閲覧者たちはとても興味深かった。なぜなら「11月に世界は激変になる可能性が高い」と書いたところ、普段は無言で見ている友人たちが続々と「なんだ、なんだ!?」とメッセージをくれたからである。
中にはロンドン・シティーの猛者からのメールもあった。この人物は特に徹底した合理主義者であって、決して返事などくれないのであるが、この時は正に「前のめり」。読んでいる私の方がビックリだった。
そこで思ったことがいくつかある。第一にどうやらこの秋に世界は大きく動くという明示的な情報、あるいは「気配」がガイジンたちの間で徐々に出回っていたのではないかということである。
第二に、それでは一体何が起きるのかということについての「答え」をすがるように、日本人である私に求めていた感じがしたことである。普段はほとんど無視されている我が国が、大きな曲がり角に立っている気がしてならなかった。
我が国ではしばしば自らのことを「ガラパゴス」などと称して卑下する輩やからがいる。だが私からすればそれほどの「高等戦略」は他にないのである。他の連中が同じルールでゲームをしている中、一人だけ違うゲームで独り遊びをしているので孤独なように見える日本。だが大勢のゲームのルールが崩壊する時、彼らがすがる先は私たち日本のゲームしかなくなるのである。その瞬間、我が国は主役に躍り出ることになる。
問題なのは、肝心の私たち日本人がその意味で覚醒しているかどうかだ。「ジャパン・ラッシュ」がすでに始まった今、それが問われている。
原田武夫(はらだ・たけお)
元外交官。原田武夫国際戦略情報研究所代表(CEO)。
情報リテラシー教育を多方面に展開。講演・執筆活動、企業研修などで活躍。
https://haradatakeo.com/