長期化する景気低迷、混迷を続ける政治。その背景において「集団免疫」が形成されず、全く終わる気配のない、新型コロナウイルスによるパンデミック(COVID-19)。そして我が国の日本海側を断続的に襲う豪雪とその被害。―さすがにここまでのことが生じると「昨日と今日は同じ、そして今日と明日も同じ」などと安逸に考えている読者の皆様はいらっしゃらないのではないかと拝察する。
しかし同時にそうした「正しい認識」へとようやくたどり着いたとしても問題は「それではこの先、どうすればよいのか」というhowに対する答えを誰も示してはくれていないということなのだ。
その結果思い悩む人が続々と出始めている。この原稿を書いている最中に(2021年1月中旬)、世界保健機構(WHO)はついに「ワクチンを接種しても年内に世界全体で集団免疫が成立することはない」と、ある意味非常に無責任な声明を発表した。「この問題」は明らかにいまだ続く、そう“まだまだ続く”のである。
もっとも、ここで思考を止めてしまってはならないと筆者としては考えている。なぜならば今回のパンデミックはあくまでも序章であり、さらには「練習曲」に過ぎないからだ。言ってみれば「本格的な別のパンデミック」が到来した際、一体どのように何が動くのか、あるいは動かないのか、結果どうなるのかをシミュレーションするためにある意味動かされたのが今回の一連の出来事なのだ。
そしてその結果、データは十分取られたのではないかと筆者としては考えている。そこで得られた膨大なデータを今度は人工知能(AI)に入れ、アルゴリズムをもって分析をして「未来予測」をする。そのことに全人類が知らず知らずに協力させられている、というのが実態のように思えてならない(データサイエンティストの端くれでもある筆者の目線から見て)。
ここで大事なことは「脱炭素化」が同時に米欧の統治エリートらによって打ち出されたということである。
例によって我が国の政治・経済上のリーダーシップは全くもって受け身であり、なぜそんな事態になっているのか、把握するのに時間がかかってしまっている。そのために出遅れ、結果、後手後手であるが故の多大なコストを支払わなければならなくなっている。
揚げ句の果てに「一体何のため?」という巨大プロジェクトが次々に打ち出され、耳目を集めてはいるが、大きな疑問符がつけられている次第だ。
端的にここで書いておきたいと思う。米欧の統治エリートらがかねてよりこのタイミングで行おうとしてきたのは「アラブからの決別」だ。そのために石油価格を乱高下させ、アラブ社会を大混乱に陥れた。
そして揚げ句の果てに「石油は害悪」という、これまでとは真逆の言論を打ち出し、結果としてアラブ世界は大いに動揺し続けている。エネルギーだけではない。「人権」「ガバナンス」といった独占・寡占体制であるアラブ世界が嫌がるワードをグローバルスタンダードだといっては押し付ける米欧の統治エリートらの意図は、アラブのリーダーシップを完全に押し込めることである。
しかしそれにしても「脱炭素」というのはよいが、内燃機関以外にどうやって動力を確保し、そのためのエネルギーはどうするというのであろうか。この点については「水素ではないか」という答えがすぐに返ってくるわけだが、その水素こそ、これを大量に、かつ安定的に造り出す手段が確立していないのである。そうした中で今回のパンデミックが生じた。それどころではないのがヒトの命をめぐる昨今の状況なわけで、全体として何が何だかわからない状況に陥っている。どうなるのであろうか。
端的に「未来の答え」を書いておきたいと思う。未来を制するのはアクア、すなわち「水」だ。水から水素を取り出し、あるいはその水は空気から取り出す。そうした技術が必ず必要となり、また確立させることになる。その日が来るまで当分の間、大混乱は続く。だがそうした「ゴール」は決して見失うことなく、前に進んで行きたいと思う今日この頃である。
原田武夫 はらだ・たけお
元キャリア外交官。原田武夫国際戦略情報研究所代表(CEO)。情報リテラシー教育を多方面に展開。2015年よりG20を支える「B20」のメンバー。
※『Nile’s NILE』に掲載した記事をWEB用に編集し再掲載しています