ロールス・ロイス ファントム クーペ
自動車の王として君臨するロールス・ロイスが、生まれ変わった新生ファントムを発表したのが2003年。そこからホイールベースを延長したEWB、ドロップヘッドクーペとバリエイションを増やし、今年、最終章ともいえるクーペを発表した。
ファントムの名称は、1925年から続くロールス・ロイスでも最高級シリーズに与えられるもので、このクーペもその名に恥じることのない雄大なモデルとなっている。そもそも“クーペ”とはフランス語の「短い」という意味の言葉が語源であるが、ファントムクーペは見る限り圧倒的に大きい。およそ乗用車の中では最高ランクのその大きさが、まさに王が自ら操るにふさわしい乗り物たらしめている。
王が駆るにふさわしいクーペ
クーペという乗り物はリムジンやセダンと違い、オーナー自らが操るもの。例えるなら、豪華な馬車に乗るか勇猛な馬を駆るかの違いだ。王の駆る勇猛な馬は当然、力強く、そして王に従順でなければならない。ではファンタムクーペは? むろん、エンジンも足も、王が自ら操るにふさわしく育て上げられている。
実際、リムジンであるファントムとこのファントムクーペを比べれば、フロントシートに乗りこんだ瞬間、その違いは一目瞭然。クーペはあくまでもクーペらしく、自ら操るがゆえの適度な緊張感を感じられる。攻めるために操ると言ってもいいほどアグレッシブな性格は、職人が手作業で綿密に作り上げる、総アルミのボックス構造による強靭な骨格がもたらす高剛性ゆえである。したがって、クーペのクローズドボディは王の鎧と言えるほど強い。460馬力をいともたやすく操るためのその鎧は、しかし総アルミのおかげで、見た目の重厚感に反して存外に軽い。
世界最高峰のステージにふさわしい車
リムジンであれクーペであれ、どれほどラグジュアリーなシーン、フォーマルな場においても、ファントムほどマッチングし、また見事に役割を果たす車はない。それゆえ、VIPをもてなす機会が多い業界においては、たとえばザ・ペニンシュラ東京、ザ・リッツ・カールトン東京などではファントムが送迎車として使われ、また最高級車によるハイヤーサービス「プライム・オート」でも、国内外のVIPの送迎にファントムを用いられる。そしてセレブ界ではディビッド・ベッカムが、ファントムドロップヘッドクーペを自ら操り、また日本では、たとえばストリートカジュアルファッション「A BATHING APE」のプロデューサー「NIGO」がファントムを駆るという。ちなみに彼のファントムは迷彩カラーだ。
国境も業界をも超越した絶対的な価値と存在感を有する、キング・オブ・カー。それこそがファントムの、ファントムたるゆえんである。
※『Nile’s NILE』に掲載した記事をWEB用に編集し再掲載しています