転機となったフォーリサローネ
LEXUSは2005年の初出展以前から、欧州におけるプロモーションを積極的に展開していたものの、ブランドイメージが速やかに深く浸透するというわけにはいかなかった。その大きな理由は欧州の地域性にある。 というのも、欧州ではカタログスペック以上に、ブランドの哲学や文化、いうなればクルマが醸す世界観を重視する傾向にあるからだ。例えば、ロールスロイス社のエンジンは、世界唯一の超音速旅客機であったコンコルドに搭載されていたほど優秀なものであるが、ロールスロイスを語る際に、こうしたカタログスペックは ナンセンスである、というふうに。
そうした欧州において新生のブランドであるLEXUSは不利だったのだ。が、 厳しい状況にありながらも、フォーリサローネ初出展時に好評価を得たのを機に、LEXUSは徐々にではあるが欧州での地位を着実に築いてきた。今や、LEXUSとい うブランドの背景で脈打つ世界観は人々の理解を得るに至ったといえる。
新たなる美と価値観の開花
ではLEXUSが主張する世界観とは何か。それは「L-finesse」と呼ばれる哲学に立脚している。その意味は、最先端 =Leading edgeであり、かつ洗練された深み=finesseを兼ね備えた存在、というデザインフィロソフィだ。さらにこのL-finesseの世界観を紐解くならば、それらは『予』『純』『妙』というファクターが支えるコスモスといえる。今回のサローネでは、日常⇔非日常、自然⇔人工といった相反するファクターを包み込むデザインフィロソフィを、同時出展された樹脂製の幾何学的なオブジェ群が端的に視覚化していた。
そして、2005年の秋からブラ ンド展開がスタートした日本。期せずして、ここでもサローネから始まった反響の連鎖が続いている。洋の西⇔ 東という地理的、文化的な「二律双生」———相反するものが融合して新たな美を生み出す———を可能にするのも、 それがLEXUSであるからに他ならない。