環境先進国ドイツ、どこまで対策済み?
自他共に環境先進国として認められるドイツ。だが、実は自動車に関する環境保護対策となると歯切れはあまり良くない。それはまず、この国のメーカーは平均以上の快適性と高性能とを売りにしたクルマを多く生産し、輸出しているからである。ポルシェ・カイエンGTS、メルセデスML63AMG、あるいはアウディR8などの巨大なクルマがそれにあたる。
現在、環境問題でもっとも注目されているのは地球温暖化の元凶である二酸化炭素の削減だが、これらのクルマが1km走る間に排出する二酸化炭素は、カイエンが361g、AMGは392g、R8が349gと、 欧州委員会が定める2012年までに守るべきガイドライン130g/kmの3倍近い(プリウスは104g/km)。もちろん ドイツのメーカー全部がこうした傾向にあるわけではなく、フォルクスワーゲンは前述のメーカーよりも小さなクルマを生産しており、環境対策に邁進しているのは言うまでもない。しかしもっと根本的な問題は、ドイツには速度制限のないアウトバーンが存在することだ。
EUの攻撃にドイツ政府は苦しい言い訳
速度無制限のドイツのアウトバーンは、地続きの欧州各国やブラッセルのEU環境委員会から批判の対象となっており、また民間の機関「ドイツ自動車交通クラブ」の試算によれば、全路線に120km/hのスピード・リミットを設ければ年間200万tのCO2低減につながるとの数字も出ている。しかし速度制限の導入は、高性能を売りにするドイツ自動車メーカーにとって死活問題。これら企業を優遇する政府は、たとえ速度制限が導入されてもCO2排出量は0.3%しか減らないと発表し、それよりも渋滞を解消するのが先決だとして矛先を変えようとしている。こうした中、EU環境委員会では2013年までに平均排出量130gを越えるメーカーに課徴金導入を考えている。そうなれば、ドイツ・メーカーは大きな打撃をこうむることになりかねない。当然、各メーカーは対策を練っている。
※『Nile’s NILE』に掲載した記事をWEB用に編集し再掲載しています