金の延べ棒なら目方で値段が決まり、相場もはっきりしているが、古銭でもうけるなんて夢物語――アンティークコインの価値を知らない人は、こう言う。しかし実際にアンティークコインを投資目的で買っているのは、世界中の現役投資家たちである。資産運用のプロが価値を認めるものに対して、なぜそのような思いを抱くのか?
「それはひとえに知識と情報の不足だと思います」
欧米の収集家やディーラーと直接交渉し、ネットオークションにはなかなか出品されない希少なアンティークコインを扱うユニバーサルコイン代表取締役の西村直樹氏はこう言い切る。彼はアンティークコイン投資家の間では知る人ぞ知る専門家だ。
「古銭でひと山当てるなんて、と考えている方の多くは、日本の大判小判や埋蔵金を掘り当てるようなイメージを持たれている。しかし今、世界中の投資家たちが注目しているのは、ヨーロッパの王侯貴族たちが家宝として所有していたコインであり、歴史も価値も全く違います。こうしたアンティークコインは限られた人たちの間でだけ取引されていたため、あまり知られていない資産でした。しかし欧米の不景気も長引き、増加するアジアの富裕層を含む投資家に向けて秘蔵品を手放す、という需要と供給の一致が、世界規模の市場を実現したのです」
ローマ時代の金貨など、歴史的価値の高いアンティークコインは億単位の価格で取引される。日本円で主に1000万円以上のものが、投資家たちの狙い目だ。
「金の延べ棒の場合は確かに目方通りの値段で取引されますが、逆に言えばそれ以上に値上がりすることはありません。しかしアンティークコインは大勢の人が求めるものを持っていれば、値段はどこまでも上がっていきます。しかも投資の対象になるような価値の高いアンティークコインは、ほぼどれも現存する枚数が分かっているので、急に数が増えて希少性が失われることもありません。市場が広がり求める人が増えた分、希少性はより高まる。値崩れしない投資対象だと資産運用のプロたちが判断しているのです」
もちろん大前提として、投資する価値のあるアンティークコインを適正価格で手に入れなければならない。そのためにはまず正しい知識を身につけ、最新情報を手に入れたうえで、信頼できる店から買うことが重要だ。さらに、できるだけ多くの実物を見ることが必要だと、西村氏はアドバイスする。
「銀座のギャラリーを11月にリニューアルオープンし、ショップを兼ねたスペースにしました。アンティークコインとは? と疑問を持つ方から、実際に購入を検討されている方まで、その魅力を実際に確かめていただけるようになっています。さらに詳しく知りたい方のためには書籍も執筆しています。投資はイメージではなく根拠に基づいた数字で判断する。これはどんな資産運用でも勝つための基本です」
●銀座ユニバーサルコインギャラリー
TEL 03-6274-6221
※『Nile’s NILE』に掲載した記事をWEB用に編集し再掲載しています