北欧デンマークならではの洗練されたデザインが特徴の老舗オーディオブランドBANG&OLUFSEN(以下B&O)のアイコン的イヤホンがついにBluetoothワイヤレス機EARSETとなった。EARSETはHeadphone A8(以下A8)からEarset 3iと続くポータブルオーディオの世界にB&Oの存在を知らしめたエポックメイキングなイヤホンの意匠を継承したワイヤレスモデルである。
B&Oは1925年に創業。1960年代からデザインと機能性を両立したスタイリッシュな製品を手掛けており、そのスタンスは変わることなく現在に継承されている。90年代、カセットテープやCD、MDプレーヤーといったポータブルオーディオのニーズが高まり、国内外問わずさまざまな製品が登場。当時のイヤホンは現在の耳栓形式(カナル型)ではなく、耳介にはめ込むだけのシンプルなインイヤー形式であった。比較的大口径なドライバーユニットを使えることや、ヌケの良い開放的な音が得られるというメリットがある一方、装着性に個人差があり、外れやすいというのが難点であった。
そうした中で登場したのがB&O初のイヤホンA8である。2000年代初頭に登場したこのイヤホンが画期的だったのは、イヤホンの装着性を高めるイヤーフックを設けていた点だ。アルミ材を用いた堅牢な可動構造を持っており、3点の調整箇所を設けてしっかりと耳へ固定できる機構は非常に先進的であった。
A8は国内ブランドの高級モデルが1万円前後という時代に、1万4000円というプライスであったことからも特別な存在であったことがうかがえる。このメカニカルな構造をB&Oらしい、シンプルながらも唯一の個性とする優れたデザインによってまとめ上げていた点も素晴らしかった。
時代は流れ、今や携帯電話で音楽が楽しめるようになったが、A8の現代版モデルEarset 3iは音楽再生だけでなく、通話などのiPhone操作にも対応したリモコンを装備。時代に合わせた進化を遂げている。そしてこのEARSETはイヤホン端子が排除された現行iPhoneに最も適したスタイル=Bluetoothワイヤレス接続を実現した。まさに伝統と最新の機能性の融合を果たした製品であり、ワイヤレスという開放的な世界観の素晴らしさを堪能できる逸品だ。耳栓方式のように周囲の音を遮ることがないオープンな装着性によって、通勤などの日常使いはもちろん、休日のジョギングなどにもフィットする。
EARSETは特にiPhoneとの接続でより良い音質となるAACコーデックを採用。落ち着き良く伸びやかな低域の豊かさと、スッキリと明瞭な高域の表現力を併せ持つ、バランス良いサウンドが特徴だ。音漏れへの配慮も必要ではあるが、耳栓方式ではない解放感と自然な楽器、ボーカルの際立ち感は何時間聴いていても飽きがこない。初めてのBluetoothモデルとしてこれほど理想の選択肢はないだろう。
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※『Nile’s NILE』に掲載した記事をWEB用に編集し再掲載しています