伝統と美、革新の饗宴

20年近い歳月に渡り独自のスタイルを貫くイヤホンがワイヤレスと出会う

Text Takashi Iwai

20年近い歳月に渡り独自のスタイルを貫くイヤホンがワイヤレスと出会う

イヤホン
イヤーフックと一体化した画期的なデザインを持つイヤホンとして、20年近く愛されてきたアイコン的存在にBluetooth機能を追加。
伝統と先進性を両立する万能モデルだ。32,900円。

北欧デンマークならではの洗練されたデザインが特徴の老舗オーディオブランドBANG&OLUFSEN(以下B&O)のアイコン的イヤホンがついにBluetoothワイヤレス機EARSETとなった。EARSETはHeadphone A8(以下A8)からEarset 3iと続くポータブルオーディオの世界にB&Oの存在を知らしめたエポックメイキングなイヤホンの意匠を継承したワイヤレスモデルである。

B&Oは1925年に創業。1960年代からデザインと機能性を両立したスタイリッシュな製品を手掛けており、そのスタンスは変わることなく現在に継承されている。90年代、カセットテープやCD、MDプレーヤーといったポータブルオーディオのニーズが高まり、国内外問わずさまざまな製品が登場。当時のイヤホンは現在の耳栓形式(カナル型)ではなく、耳介にはめ込むだけのシンプルなインイヤー形式であった。比較的大口径なドライバーユニットを使えることや、ヌケの良い開放的な音が得られるというメリットがある一方、装着性に個人差があり、外れやすいというのが難点であった。

そうした中で登場したのがB&O初のイヤホンA8である。2000年代初頭に登場したこのイヤホンが画期的だったのは、イヤホンの装着性を高めるイヤーフックを設けていた点だ。アルミ材を用いた堅牢な可動構造を持っており、3点の調整箇所を設けてしっかりと耳へ固定できる機構は非常に先進的であった。

心臓部には14.2㎜の大口径ドライバーを搭載し、ゆとりのある低域を実現。フック構造を中心にアルミ材を用いており、スタイリッシュな意匠に加え、品位の高さも際立つ。

A8は国内ブランドの高級モデルが1万円前後という時代に、1万4000円というプライスであったことからも特別な存在であったことがうかがえる。このメカニカルな構造をB&Oらしい、シンプルながらも唯一の個性とする優れたデザインによってまとめ上げていた点も素晴らしかった。

  • 伝統と美、革新の饗宴 伝統と美、革新の饗宴
    ソフトラバーが装着されたイヤーフックは、軸点から自由に可動。水平方向にも動く他、ピストンのようにフック部が上下し、合計3点の調整機構により確実に本体を固定する。
  • 伝統と美、革新の饗宴 伝統と美、革新の饗宴
    カラーリングはアルミ部がガンメタル調のブラックに加え、よりiPhoneとの親和性が高いアルミの自の色を生かしたシルバーがアクセントとなるホワイトも6月上旬に発売予定。
  • 伝統と美、革新の饗宴
  • 伝統と美、革新の饗宴

時代は流れ、今や携帯電話で音楽が楽しめるようになったが、A8の現代版モデルEarset 3iは音楽再生だけでなく、通話などのiPhone操作にも対応したリモコンを装備。時代に合わせた進化を遂げている。そしてこのEARSETはイヤホン端子が排除された現行iPhoneに最も適したスタイル=Bluetoothワイヤレス接続を実現した。まさに伝統と最新の機能性の融合を果たした製品であり、ワイヤレスという開放的な世界観の素晴らしさを堪能できる逸品だ。耳栓方式のように周囲の音を遮ることがないオープンな装着性によって、通勤などの日常使いはもちろん、休日のジョギングなどにもフィットする。

EARSETは特にiPhoneとの接続でより良い音質となるAACコーデックを採用。落ち着き良く伸びやかな低域の豊かさと、スッキリと明瞭な高域の表現力を併せ持つ、バランス良いサウンドが特徴だ。音漏れへの配慮も必要ではあるが、耳栓方式ではない解放感と自然な楽器、ボーカルの際立ち感は何時間聴いていても飽きがこない。初めてのBluetoothモデルとしてこれほど理想の選択肢はないだろう。

●完実電気 TEL050-3388-6838

※『Nile’s NILE』に掲載した記事をWEB用に編集し再掲載しています

ラグジュアリーとは何か?

ラグジュアリーとは何か?

それを問い直すことが、今、時代と向き合うことと同義語になってきました。今、地球規模での価値観の変容が進んでいます。
サステナブル、SDGs、ESG……これらのタームが、生活の中に自然と溶け込みつつあります。持続可能な社会への意識を高めることが、個人にも、社会全体にも求められ、既に多くのブランドや企業が、こうしたスタンスを取り始めています。「NILE PORT」では、先進的な意識を持ったブランドや読者と価値観をシェアしながら、今という時代におけるラグジュアリーを捉え直し、再提示したいと考えています。