メルセデス・ベンツの新型車CLSシューティングブレーク
クルマは、趣味の世界を広げてくれる、優れた道具だ。
英国にシューティングブレークというクルマのジャンルがある。これなど最たるものだと思う。
セダンともステーションワゴンとも違う。デザイン性を重視したクーペをベースに、元のイメージを生かしながら、リアにちょっとした荷室を付け足している。
その荷室は、狩猟(シューティング)に使う鉄砲や獲物などを入れるためのもので、わざわざ馬車の用語(ブレーク)を使ってワゴンのような実用一辺倒のクルマでないことを強調しているのが特徴だ。あくまで趣味のために使うクルマなのだ。
英国では専門改造業者がいて、高級クーペを持ち込むと、しゃれた荷室を付けてくれるようになっていた。
メルセデス・ベンツが2012年10月に発売したCLSシューティングブレークは、そんな歴史を思わせる。「4ドアクーペ」の先駆であり、日本でも人気が高く、今年フルモデルチェンジしたCLSのエレガントなイメージを持ちながら、“シューティングブレーク”の荷室を備えている。
CLSのモデルチェンジと同時にデザイン開発したのだろう。フロントからリアまで破綻のないスタイリングは流麗なクーペのように美しく、パーティーにも乗っていけるようなフォーマルさがある。
それに、さまざまな趣味に使える機能性。かつての豊かな趣味復権と言ってもいいが、見事に現代の豊かな生活に溶け込むクルマである。
エキサイトメントとリラクセーションと
メルセデス・ベンツCLSに新たに設定されたシューティングブレークは、三つのグレードで構成される。
最も多くの人が選ぶであろうCLS 350をベースモデルにフルタイムの4輪駆動システムを備え利便性が高いCLS 550、そしてよりスポーティーなドライビングを好むドライバー向けのCLS 63AMGが内訳だ。
実際に操縦すると、3.5リッターV6でも十分すぎるほどのパワフルさだ。エンジン出力特性は巧妙な設定で、スタートは驚くほど軽快、かつ、トルクはごく低回転域から途切れることなく、エンジン回転に合わせてもりもりと力を出す。
より運転を楽しみたいときは、スポーツモードを選ぶこともできる。
同時に静粛性は高く、乗り心地も良い。オーナーにはおなじみのメルセデスの美点が守られているのだ。
サスペンションシステムは丁寧に路面の凹凸を吸収してくれるし、正確だが神経質ではない独特のステアリングフィールも魅力的だ。
また長距離レーダーと短距離レーダーが車両周囲の状況を常に把握し、必要に応じて自動でブレーキをかけて危険を回避。車間距離を一定に保つ自動追従システムを搭載するなど、快適で安全な運手をサポートする最新の機能が装備されている。
例えばゴルフのときは、往路は適度に気分を高揚させ、帰路は精神を穏やかに静めてくれる。家族五人で出掛けられるし、趣味性が高いうえにオールマイティー。大変よく出来たクルマなのだ。
●CLS 350 BlueEFFICIENCY
Shooting Brake
ボディー:全長4960×全幅1880×全高1420㎜
エンジン:3.5邃天型6気筒DOHC
最高出力:225kW(306ps)/6,500rpm
最大トルク:370Nm/3500~5250rpm
駆動方式:FR
トランスミッション:7速AT
価格:9,700,000円
※『Nile’s NILE』に掲載した記事をWEB用に編集し再掲載しています