人々に愛され続ける変わらないもの、クルマとオーベルジュ、これらにもそんな共通項があった……。
マスタングはハードボイルドな世界が似合うクルマだ。トム・クルーズは『バニラ・スカイ』で、キアヌ・リーブスは『ハートブルー』で、そしてショーン・コネリーは『007 ダイヤモンドは永遠に』でそのステアリングを握った。映画のストーリーは必ずしもハードボイルドではないが、どこか男臭さを感じる役者たちと共演している。その意味じゃ、マスタングは世界が認める男らしいクルマの代名詞なのかもしれない。
昨年10月にエクステリアを中心に進化したマスタングを眺めると、そんなことを感じた。キリッとした目付きのヘッドライト、力強さをアピールするボンネットの膨らみが、戦闘的なイメージをかき立てる。
確かに、昨今のクルマはユニバーサルデザインという名の下、使いやすさが優先され、個性が薄れている。それに開発や生産の拠点もばらけ、国籍もボーダーレスになったのは事実だ。だが、マスタングは誕生から50年近く経っても一目でアメリカ車と分かるデザインをまとう。しかも、ミッドセンチュリーというアメリカのいい時代の産物らしい良さをしっかり受け継いでいるからお見事だ。
それはインテリアも同じ。シートデザインやメーターのレタリングはまんま60年代風。が、液晶カラーディスプレーなどそこに備わる機能は今日的な技術で埋め尽くされる。なるほどこれが、アイデンティティーとなるものを残しながらの進化。そんなこだわりが男臭い役者たちの相棒となるゆえんなのかもしれない。
そんなマスタングに乗って東京から離れた。目指したのは箱根の奥座敷、仙石原。フォンテーヌ・ブロー仙石亭である。ここは全室展望露天風呂付き、本格フレンチのオーベルジュ。ゆっくり湯に浸かりカラダを癒してから美食に向かい合えるという、週末スイッチをオフにするのにピッタリの宿だ。
食はオーナーシェフ斎藤氏が腕を振るう。日本人による日本人のための創作的フレンチだ。19年間東京の帝国ホテルで国賓をもてなしてきた経歴を鑑みれば、もはや身を任せるしかない。東京から1時間半のドライブで非日常的な世界にどっぷり浸からせてもらおう。皿の上の素材が季節を感じさせてくれるのは、言わずもがなだ。
食事を部屋で取るかダイニングでとるかを選べるのもここのだいご味。オーベルジュとして、ゲストがより心地良いと思える環境で食を提供する姿勢がうれしい。
フォンテーヌ・ブロー仙石亭には、アンティークの家具やアンコールワットと同じ石を使った石壁があり、流木のオブジェなどが飾られる。それはまるで、自然のもの、古いものを大切にし、素材の上質さを表現しているようだ。これもまた、料理、そしてそれを提供するオーベルジュに対するオーナーシェフのこだわりの一部かもしれない。
そんなことを感じていたらマスタングのことを思い出した。古いもの、愛され続けるものを大切にしながら進化する姿はまさに共通項。クルマもオーベルジュも、それが多くの人に長く受け入れられ続ける秘訣なのかもしれない。
●Ford Mustang V8 GT Convertible Premium
ボディー:全長4815×全幅1880×全高1415mm
エンジン:5.0リットル V型8気筒DOHC
最高出力:313kW(426ps)/6500rpm
最大トルク:529Nm(53.9kgm)/4250rpm
駆動方式:FR
トランスミッション: 6速AT
価格:5,700,000円
●フォードお客様相談室
フリーダイヤル:0120-125-175
●箱根仙石原温泉 フォンテーヌ・ブロー仙石亭
神奈川県足柄下郡箱根町仙石原イタリ1245-703
TEL:0460-84-0501
料金:1泊2食付き 27,300円~(2名1室利用時の1名料金)
チェックイン15:00 / チェックアウト11:00
※『Nile’s NILE』に掲載した記事をWEB用に編集し再掲載しています