ベントレー コンチネンタルGTスピード ファーストインプレッション
「今年は昨年より25%増えています。9月末までの販売台数は5969台。これまでより多くお客様のところへお届けしています……」
グローバルマーケットにおいて好調な販売成績の報告から、ベントレーのプレゼンテーションははじまった。場所はミュンヘン郊外のリゾートホテル。コンチネンタルGTスピードのメディア向け国際試乗会である。
ベントレー コンチネンタルGTシリーズは日本でもかなり売れたモデルだ。日本導入は2004年頃で2006年には年間500台以上の数字を残している。以前は100台も満たなかったことを考えれば、驚異的な躍進といえる。
もちろん、その背景にはフォルクスワーゲンが親会社となったことが大きく関係する。彼らのエンジニアリングと大きな投資でベントレーの魅力を引き出したのだ。
そして生まれたコンチネンタルGTシリーズだが、現在それも次のステップに進む。V8エンジンを積んだり、ハードウエアを進化させて次世代へと生まれ変わった。スタイリングをそのままに中身をグレードアップさせたのである。
今回ここで紹介するコンチネンタルGTスピードはそのハイパフォーマンス版。最高出力625馬力の超ド級マシンである。
ハイパフォーマンスモデルはニッチじゃない
ここにおもしろいデータがある。プレゼンテーションで使われたパワーポイントだが、これによるとGTスピードの販売はコンチネンタルGTとの対比においてほぼ対等と表している。2007年の途中から発売開始したそれは、翌年から2011年までの間平均して50%を超えているのだ。
つまり、彼らはGTスピードは決してニッチなモデルでないことを伝えようとしている。一般的に考えて、プライスのグッと跳ね上がるハイパワーモデルは一部のマニアのためのものだが、ベントレーに関してはそうではないと。パワーを追い求めるのが、ベントレーカスタマーの特性ともいいたいようだ。
ではでは、新型GTスピードはいったいどんなシロモノなのか。
パワーアップされたW12エンジンと65kgという大人一人分の減量でこのクルマは性能を上げた。もちろん、ベースとなるモデルが進化したことで、クルマ自体のつくりがしっかりし、ボディ剛性などが高まっていることも見逃せない。どんなにパワートレーンの性能がよくてもカラダが堅牢でなければなんの意味もない。
結果、最高速度は330km/h、0-100km/h加速は4.2秒となった。もちろん、燃費の改善と二酸化炭素排出量の軽減も同時に行っている。
「ならでは」では済ませない、 スポーツ走行と快適ドライブの共存
実際に走らせてみて感じるのは、625馬力という数字のわりにいい意味で普通だということ。これだけの存在感を持ちながら特に緊張感を持たずスッとクルマをスタートできる。
もちろんこの辺は「ベントレーならでは」の手法で、ふんだんに使われたレザーとウッドの世界がドライバーを気持ちよくさせる。試乗のおよそ一ヶ月前、ベントレー工場でウッドパネルの乾燥室へ入れてもらったが、そのときの香りを思い出した。
乗り心地もそう。サスペンションは4つの段階で固められるが、スポーツモードにしてもしなやかさは残る。段差をピタリと収めながらもゴツゴツしたところはなく、至極自然な乗り心地はいわゆる高級サルーンといった装いだ。
ただ、その気になってアクセルを踏み込むと、とてつもない加速が呼び起こされる。猛獣が喉を鳴らしながら吠えるようなエグゾーストサウンドと、早回しのように流れる景色が、目の前で繰り広げられる。625馬力は……半端ではない。
それでも安全領域が保たれていることを付け加えよう。4WDという駆動方式がしっかり路面をとらえ、かつ電子デバイスがクルマの挙動をコントロールする。この分野のエンジニアリングは一級品だ。
アウトバーンの無制限速度域では最高速度まではいかないが、2割減は軽く出る。その瞬発力は想像以上。それと同居する快適な居住空間。これがベントレーといえばそれまでだが、この感動は他のモノに代えられない……。
●ベントレー モーターズ ジャパン TEL0120-97-7797
※『Nile’s NILE』に掲載した記事をWEB用に編集し再掲載しています