今年7月、京都三条木屋町通りに大正ロマン薫る「ホテル アル京都」がオープンした。デザインを手掛けたのは、ギャルドのイタリア人デザイナー、フランチェスコ・リストリ氏。「大正ロマン」とイリア人の感性はどんな化学反応を起こしたのか。
「今回初めて出合った世界観で、最初は正直、『西洋に倣っただけで、こなれてないな。未熟だな』という印象でした。もっとも200余年の鎖国が解けて急激に西洋の文物が流入したのですから、当然ですよね。でも駒場公園の旧前田家本邸や、金沢白鳥路と京都山科のホテル山楽などを見て勉強をするうちに、西洋を取り入れながらも新たな世界観を創出していると感動しました。そうして建築様式の裏にあるストーリーを深く理解したことで、100年前の大正ロマンの感性を受け継ぎつつ、今という時代に沿った新しいモダニムを表現できたと自負しています」
ギャルドはこれまでスタッフの士気を高めるオフィスや、ブランドメッセージを表現した商業施設などのデザインを得意としてきた。その中で近年増えているのが、今回のホテルのようなホスピタリティ分野だという。しかし空間の用途は違っても、デザインに込める思いは同じ。「どんなプロジェクトでも、空間の中心にいるのは『人』でなければいないと思っています。そこに集う人たちがより深く親密に、かつ刺激的に交流できる場を創るよう努めています」とリストリ氏は力強く語る。今後展開される新しい世界観に注目したい。
●ギャルド
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※『Nile’s NILE』2021年9月号に掲載した記事をWEB用に編集し掲載しています