いつの世も「ゲームチェンジャー」は予告もなく現れる。昨今、世界中でブームとなっているSUVシーンの場合でも、2015年にベントレー ベンテイガがデビューしたときがそうだった。
それまで高級や高性能を謳うSUVはあまたあったが、1世紀近い歴史の中で培ったクラフツマンシップ、最高品質のレザーやウッド、そしてベントレーの持つ最新テクノロジーを惜しみなく注ぎ込んだベンテイガは、一夜にしてハイエンドプレミアムSUVの概念を変えてしまうほどのインパクトをもたらした。
2020年、総生産台数2万台を突破するなど好調なセールスが伝えられていたベンテイガが第2世代へと進化を遂げるというニュースが流れたときもまた衝撃的だった。
なぜなら我々の前に姿を現した新型ベンテイガV8は、フロントやリアのデザインを刷新し、よりエレガントでスタイリッシュに生まれ変わっていたからだ。
そのモデルチェンジの恩恵は見た目だけでない。後輪軸の20mm拡大でより安定したハンドリング、足元が最大で100mm広がり、リクライニングの作動域が2倍となったリアシート、10.9インチのタッチスクリーンを介し、さまざまな情報を提供するインフォテインメントシステムなど、運転する人にも、同乗者にもそれぞれもたらされている。
エンジンはコンチネンタル GT V8やフライングスパーV8にも搭載されている4リッターV8ツインターボ。550psのパワーと770Nmのトルクは必要にして十分以上で、普通に走っている限りには、全てが2000回転以下の世界で完結するほどの「ゆとり」がある。それゆえ必要以上にアクセルを踏まなくてもいいし、音も静かで疲れない。
加えてトルクが250Nm以下、エンジンが3500回転以下のときにシリンダーの半分を休止する気筒休止システムが備わっており、燃費性能の向上やCO2排出量の削減を果たしている。
さらに21年中にはベンテイガ ハイブリッドの日本導入も予定されており、ベントレー全体の50%以上の生産台数を誇る主力車種として、同社が力を入れているSDGsにも貢献しているのだ。
チリやボリビアの荒野、デンマークのビーチ、雪と氷のアイスランド、そして中東の砂丘など、地球上で思いつく限りのあらゆる地形を走破して鍛え上げたというだけあって、ベンテイガV8にはどんな天候でも環境でも走る場所を選ばない逞しさがある。
その一方でビロードの上を滑るように、静かにホテルのエントランスに乗りつけるリムジンのような上品さも、日々を共に過ごすカジュアルさも使いやすさも併せ持っている。まさに現代に現れた魔法の絨毯のようなクルマなのだ。
そこに息づいているのは、「速い車、良い車、クラス最高の車」をモットーにしていた創業者、W.O.ベントレーのクルマ作りのフィロソフィーだ。「良いもの」の本質は、いつの時代も変わらないのである。
●ベントレーコール
TEL 0120-97-7797
※『Nile’s NILE』2021年7月号に掲載した記事をWEB用に編集し掲載しています