今年で誕生50周年を迎えたマスタング。これほど、アメリカ車らしいアメリカ車もないだろう。マッチョでタフ、1964年の登場以来、機能的なバージョンアップを続け、荒野を駆ける野生馬の名にふさわしい姿で、人々を魅了し続けている。
モータージャーナリストの九島辰也氏にとって、マスタングは特別な思い入れのある車だという。その大きな理由は1964年生まれの“同い年”だということ。また青春時代に憧れたLAスタイルに欠かせない、アメリカンヒーローの象徴的な車だということも、マスタングが彼を引き付ける理由になっている。
「1964年は車の当たり年なんですよ。マスタングもそうだし、ポルシェ911など、車の歴史に燦然と輝く名車が生まれた年。自分にとっては一緒に年をとった、同じ時代を生きてきたってことで、やはり特別な思い入れがありますね。学生時代、アメリカンカルチャーに影響を受けてLAスタイルを目指し、サーフボード担いで湘南の海に通っていた私にとって、マスタングは憧れの車でした。『ビバリーヒルズ青春白書』ってドラマがあったじゃないですか。あの主人公格のブランドン家の車がファーストマスタングだったんですよ。あのドラマ、長かったし、すごく登場人物が多くて混乱しそうになりますが(笑)、ブランドン家はその時代ごとのマスタングに乗ってるからすぐ分かる。マスタングに乗ってるってことは、イコール主人公・ヒーローってことなんです。逆に悪役はシボレーとかに乗ってて。それもかっこいいんですけどね」
青春時代の憧れだったマスタング。パワフルでかっこいいアメリカを象徴する車というイメージが、40歳を過ぎたころに少し変わった。
「かっこいいだけじゃないんですよね、マスタングって。フランス映画『男と女』のマスタングを見るとよく分かる。ワイルドな男によく似合ってるんだけど、その奥にもっと繊細さとか味わいがある。フォードがヨーロッパのスポーツカーを研究して、ジャガーなんかの影響も受けて作った車だけあって、おおらかさの中にシャープさ、モダンな部分がある。そのさりげない奥深さが、50年も続くマスタングの魅力なんだと思います」
マスタングは乗りこなすのが難しいというイメージを持つ人も多いが、九島氏はこう笑い飛ばす。
「アメリカ人が作った車ですよ? 難しいはずがない(笑)。日本では輸入車ということもあって、高級車とされてますが、アメリカではもっと身近な存在です」
一度でも乗れば、その力強い美しさの虜になる。だからこそ50年もの間、愛され続けてきたのだろう。
「50年も生き残ってきた理由は、マスタングはマスタングらしさを失わなかったからでしょう。今回の限定車も、今までのテイストを踏襲しつつ、より都会的に、クールに洗練されているけれど、トゥーマッチにはならない。変わらない。そう、マスタングは期待を裏切らないんです」
MUSTANG V8 GT Performance Package
ボディー:全長4815×全幅1880×全高1415㎜
エンジン:5.0ℓ V型8気筒DOHC
最高出力:313kW(426ps)/ 6500rpm
最大トルク:529Nm(53.9kg・m)/ 4250rpm
駆動方式:FR
トランスミッション:6速MT /セレクトシフト付き6速AT
価格:5,400,000円
●フォードお客様相談室 フリーダイヤル0120-125-175
※『Nile’s NILE』2014年8月号に掲載した記事をWEB用に編集し掲載しています