京都は常に時代の先端を走っている。それは京都が平安京として制定されて以来、文物の先進性が問われ続けてきたからだ。その結果、バームクーヘンのように、先端を走る文化は重層化され、アバンギャルドと伝統が一体となり、京都独自のモダニズムが生まれた。明治時代に京都で大きな夢を持ち、世界を舞台に活躍をした大谷光瑞のゆかりの地を、夢の結晶であるレクサスGS300hで走る。
プレミアムセダン、レクサスGSシリーズに追加された、ハイブリッドモデル、レクサスGS300h。このクルマで京都を訪れた。出掛けたのは、龍谷大学の大宮学舎だ。1639(寛永16)年に西本願寺に設けられた「学寮」に始まった龍谷大学の発祥の地である。
大宮学舎の中央にある本館、北黌(ほくこう)、南黌(なんこう)を始め、1879(明治12)年の建物が、今もほぼ完全な形で残っている。レクサスGS300hと、龍谷大学。その二つを眺めていると、さらにその背後にある、さまざまな歴史に思いがおよぶ。
レクサスといえば、1989年に米国でデビューして大いなる人気を博した後、日本に凱旋した経緯を持つ。そのグローバルな在り方と、龍谷大学の歴史が、どこかで共通するように思える。とりわけ同大学にゆかりのある、京都の浄土真宗本願寺派第22世宗主であった大谷光瑞(おおたにこうずい)が、真っ先に頭に浮かんだ。1876(明治9)年に生まれ、1948(昭和28)年に没した大谷光瑞は、大変興味深い人物。宗教家でありながら、希代の探検家でもあったからだ。
1902年から14年にかけて、仏教の伝播ルートを探る目的で調査団(大谷探検隊)を組織。中央アジアにおける、仏教の教義、東遷の跡を踏査した。インドで、釈迦ゆかりの霊鷲山(りょうじゅせん)を発見するなど、大きな功績を残している。
大谷光瑞はこれまでに文学者を刺激し、津本陽の『大谷光瑞の生涯』といった伝記小説や、毎日芸術賞を受賞した辻原登の『許されざる者』に登場する人物のモデルになるなど、多くの小説が発表されている。文学者の筆によって、壮大な夢を語る往年の姿が活写され、それがより深い興味を呼びさます。
文学者を刺激する大谷光瑞
歴史学者や仏教学者のみならず、数多くの文学者が大谷光瑞のことを書いたのには、行動の裏に時代精神も感じるからだろう。大谷探検隊結成の背景には、20世紀になって欧州で勃興したグローバリズムの影響もあったはずだ。
欧州各国が広大なアジアへと進出していく大きな流れが出てきた時代であり、そのダイナミズムへの憧憬(しょうけい)が、例えば小説家のような伝え手と、読者である受け手がともに、大谷光瑞の足跡をたどる動機になっているはずだ。
大谷光瑞は京都で、のちに龍谷大学学長となる前田慧雲(えうん)に学び、英国留学の後、前述の機運に接し、アジア探検を決意している。宗教家としての視野の広さの表れであり、同時に、世界人ともいうべき行動力が、今でも注目を集めてやまない。
自分の立ち位置を見失わず、かつ、グローバルな視野を持つ。大谷光瑞の魅力を一言で表現すると、こうなるだろうか。
龍谷大学のキャンパスに置かれたレクサスGS300hが景色となじむのは、そんな周囲の歴史まで吸収する造形力ゆえと見受けられる。
スピンドルグリルと呼ばれる新世代のフロントグリルに始まり、セダンとして均整のとれたプロポーションを、美しく光線を反射する面で構成されたボディパネルが覆っている。
走行安定性と運動性能を高い次元で実現しているとうたうGS。そのラインアップに加わったハイブリッドのGS300hは高性能と環境性能とを両立させるという、前進への意思を感じさせる。それが、龍谷大学のキャンバスに息づく精神と呼応しているのかもしれない。
ハイブリッドシステムは、178psの2.5リッター4気筒ガソリンエンジンと、143psの電気モーターとで構成される。燃費に優れる一方、アクセルを踏んだ瞬間の驚くほどの加速感も魅力だ。とりわけスポーティーさを好むドライバーのためには、「Fスポーツ」も設定されている。
専用メッシュグリルに始まり、専用スポーツサスペンション、高摩擦ブレーキパッドなどがスポーティーに装備されている。
運転者を刺激するGS300h
スポーティー志向を持ちながら環境性能も高い。燃費は、JC08モードでリッター23.2㎞。燃料消費とともに、CO2排出量も抑えている。こんな優秀な“相棒”がいれば、活動的な気持ちになり、走りを謳歌しようという気分が高まる。今までとは違うライフスタイルが見えてくるのではないだろうか。
レクサスGS300hは、静粛性が高いので、市街地で走っている限りは、大変ジェントルな印象が強い。しかしワインディングロードなどでは、剛性感の高いシャシーと、的確に設定されたサスペンション、それに正確無比なステアリングのコンビネーションで、見事な変身ぶりを見せてくれる。
ドライバーを鼓舞するかのように生き生きと走り、クルマに乗っている時間が充実したものとなるのはうれしいかぎりだ。
ドライバーズカーでありながら、後席の乗員も大事にする。室内の作りこみ品質は高く、肌が触れる部分の感触、シートのかけ心地、上体のホールド性、全方位的にレベルの高い作りだ。乗り心地から触り心地にいたるまで、全てがGS300hを大人が乗るのにふさわしいモデルに仕上がっている。
いったん街を出れば、奈良へと続くワインディングロードも、神戸への高速も、レクサスGS300hは、見事にこなしていく。しっかりした足まわりが、ドライバーに楽しさと安心感をもたらす。どこへでも気軽に足を延ばせるので、京都を中心としたエリアが、これまで以上にコンパクトになったように感じられるのも、うれしいことだ。
デザインを愛し、車内で過ごす時間を愛し、ドライビングを愛し、そしてクルマと社会と人が共存する世界を愛する。そんな人のためのクルマだ。
行動を裏付けるのは、優秀な精神であることは言をまたない。グローバルな視野を持った大谷光瑞を育てた京都で、グローバルブランドとして評価されるレクサスが生んだGS300hに乗る。そのとき感じた喜びは、どこに行こうと常にクルマとともにある。それは、このクルマが持つ、優れた精神のゆえなのだ。
※『Nile’s NILE』2013年12月号に掲載した記事をWEB用に編集し掲載しています