Mariarisum
シチリアではキリストと並んで聖母マリアがことのほか崇(あが)められている。また、シチリアをペストから救ったとされる聖ロザリアは、今も島の守護神だ。パレルモ市東部にそびえる標高約600mのペッレグリーノ山中腹に、聖ロザリアの骨を祭った洞窟教会があった。
熱心に祈る地元の人々のミサに迎えられた。無表情なマリア像、心身に迫る岩の沈黙と闇、冷気に漠然とした不安を覚えながら一緒に祈った。
今、パンデミックを経てシチリア州はまた一層イタリア経済のお荷物とされ、パレルモの美化運動も中座したらしい。今年1月には、パレルモに30年間潜伏し還暦を迎えたマフィアのボスが逮捕された。酒池肉林の跡を残す住まいには、映画『ジョーカー』のポスターと十字架が掲げられていたという。シチリア最後のゴッドファーザーは何を祈ったのだろう。
※『Nile’s NILE』2023年10月号に掲載した記事をWEB用に編集し、掲載しています