The Blue Train in South Africa Cape Town to Pretoria 1

南アフリカの行政府が置かれ、春にはジャカランダの花が咲き乱れる街プレトリアと、大陸南端の街ケープタウンを結ぶ濃紺の車両。青く霞んだ山の端に豪快に沈む太陽を車窓に映し、ブドウ畑が広がる渓谷地帯や乾いて過酷な砂漠地帯を駆け抜ける。南アフリカが誇る豪華列車ブルートレインの旅が始まる。

Photo Chiyoshi Sugawara  Text Chiyoshi Sugawara

南アフリカの行政府が置かれ、春にはジャカランダの花が咲き乱れる街プレトリアと、大陸南端の街ケープタウンを結ぶ濃紺の車両。青く霞んだ山の端に豪快に沈む太陽を車窓に映し、ブドウ畑が広がる渓谷地帯や乾いて過酷な砂漠地帯を駆け抜ける。南アフリカが誇る豪華列車ブルートレインの旅が始まる。

ブルートレイン、ラウンジカー
夕暮れ以後、いつもラウンジカーにはサクソフォンの音楽が流れる。レパートリーはジャズ、ポップス、オールディーズと幅広く、限られた空間を生かした演奏は、みんなの談笑を邪魔することもなかった。

ブルートレインの夕食

夕食は18時30分からで、男性はジャケット&タイというドレスコードが指定されていたが、半数ほどの人たちはタイなし。乗客の多くはヨーロッパとオーストラリアなどからの人たちのようだった。

私もタイを外すことにした。ラムのカツレツに、ソムリエの勧めもあり地産の赤ワイン、ステレンボッシュのピノタージュを選ぶ。ワインリストはよりすぐりの南アフリカ産を中心に充実していて、スパークリングワインもシャンパンと並んでリストアップされている。

食後はグラス片手に再びラウンジカーへ向かう。スモーカーたちは、唯一喫煙が可能なパブリックエリアとなるクラブカーへ。素晴らしい食事とワインの効用なのだろうか、乗客同士の交流がいつの間にか始まっていた。

ブルートレイン、前菜のサラダ
夕食の前菜に選んだサラダ。ソースがほんのりと甘い。

この列車の旅はほとんどの人々にとって3週間、4週間というバケーションの旅の一部で、大型野生動物との出会いを始めとするこれまでの体験や、この先の旅への期待を込めた情報が飛び交うなど、乗車初日のスケジュールは濃密だった。

スイートと呼ばれる客室に戻ると、すでにベッドルームに変わっていた。シャワーのお湯はふんだんに使えたものの、蛇口の水は飲料には適さないようで、ベッドサイドにはミネラルウォーターのボトルが置かれていて、バトラーに依頼するような用件は何もなかった。

南アフリカが誇る「移動する五つ星ホテル」とも呼ばれる豪華列車ブルートレインは、プレトリアとケープタウン間の定期ルートの運行とは別に、期間を限定したプレトリアとインド洋岸のダーバン郊外にあるジンバリロッジ間や、プレトリアと内陸の巨大リゾート、サンシティー間のサービスなども提供している。

19両編成の車両は、先頭がラゲージカーでパワーユニット、スタッフカーと続き、喫煙者のためのクラブカーの後に各車両4室のデラックススイートの車両が5両。キッチンカー、ダイニングカー、ラウンジカーの後に各車両3室のラグジュアリースイートカーが3両続いている。部屋の広さに加え、バスタブが用意された贅沢な客室である。次いでデラックススイートの車両が3両、最後尾が談話室兼展望車となっている。注意したい点はダブルベッドのスイートの室数が限られていることだ。

The Blue Train in South AfricaⅡに続く

※『Nile’s NILE』2020年8月号に掲載した記事をWEB用に編集し、掲載しています

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ラグジュアリーとは何か?

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それを問い直すことが、今、時代と向き合うことと同義語になってきました。今、地球規模での価値観の変容が進んでいます。
サステナブル、SDGs、ESG……これらのタームが、生活の中に自然と溶け込みつつあります。持続可能な社会への意識を高めることが、個人にも、社会全体にも求められ、既に多くのブランドや企業が、こうしたスタンスを取り始めています。「NILE PORT」では、先進的な意識を持ったブランドや読者と価値観をシェアしながら、今という時代におけるラグジュアリーを捉え直し、再提示したいと考えています。