ブルートレインの夕食
夕食は18時30分からで、男性はジャケット&タイというドレスコードが指定されていたが、半数ほどの人たちはタイなし。乗客の多くはヨーロッパとオーストラリアなどからの人たちのようだった。
私もタイを外すことにした。ラムのカツレツに、ソムリエの勧めもあり地産の赤ワイン、ステレンボッシュのピノタージュを選ぶ。ワインリストはよりすぐりの南アフリカ産を中心に充実していて、スパークリングワインもシャンパンと並んでリストアップされている。
食後はグラス片手に再びラウンジカーへ向かう。スモーカーたちは、唯一喫煙が可能なパブリックエリアとなるクラブカーへ。素晴らしい食事とワインの効用なのだろうか、乗客同士の交流がいつの間にか始まっていた。
この列車の旅はほとんどの人々にとって3週間、4週間というバケーションの旅の一部で、大型野生動物との出会いを始めとするこれまでの体験や、この先の旅への期待を込めた情報が飛び交うなど、乗車初日のスケジュールは濃密だった。
スイートと呼ばれる客室に戻ると、すでにベッドルームに変わっていた。シャワーのお湯はふんだんに使えたものの、蛇口の水は飲料には適さないようで、ベッドサイドにはミネラルウォーターのボトルが置かれていて、バトラーに依頼するような用件は何もなかった。
南アフリカが誇る「移動する五つ星ホテル」とも呼ばれる豪華列車ブルートレインは、プレトリアとケープタウン間の定期ルートの運行とは別に、期間を限定したプレトリアとインド洋岸のダーバン郊外にあるジンバリロッジ間や、プレトリアと内陸の巨大リゾート、サンシティー間のサービスなども提供している。
19両編成の車両は、先頭がラゲージカーでパワーユニット、スタッフカーと続き、喫煙者のためのクラブカーの後に各車両4室のデラックススイートの車両が5両。キッチンカー、ダイニングカー、ラウンジカーの後に各車両3室のラグジュアリースイートカーが3両続いている。部屋の広さに加え、バスタブが用意された贅沢な客室である。次いでデラックススイートの車両が3両、最後尾が談話室兼展望車となっている。注意したい点はダブルベッドのスイートの室数が限られていることだ。
The Blue Train in South AfricaⅡに続く
※『Nile’s NILE』2020年8月号に掲載した記事をWEB用に編集し、掲載しています