時代小説の大家・池波正太郎の三大シリーズの一つに数えられる『仕掛人・藤枝梅安』は、50年前に発表されて以来、累計部数が600万部超え! 大変なロング?ベストセラーだ。5年越しの大型プロジェクトとなった今回の映画では、梅安役に豊川悦司、相棒の彦次郎役に片岡愛之助がキャスティングされている。
今さら説明するまでもないが、梅安には二つの顔がある。“表の顔”は腕のいい鍼医者。貴賎の別なく治療を施すなど、「医は仁術」を地でいく庶民の味方だ。“裏の顔”は大金で殺しを請け負う仕掛人。生かしておいては世のため人のためにならぬ輩(やから)を針でひと刺し、闇に葬るのが仕事だ。つまり梅安という一人の人物に、真逆のキャラが同居する。この“仕掛け”そのものが、最大の魅力である。
また原作に違(たが)わず、料理へのこだわりが半端ない。全59シーン80の料理の中でも印象的なのは、梅安・彦さんが沙魚(はぜ)の煮付けを突きながら会話をする場面だ。「梅安さんはどんな時だってうめえもんを食べるな」「彦さん、思わないかい? こいつが最後の飯になるかも、と」
死と隣り合わせの日々、うまいものを食う喜びがどれほどのものか、察するに余りある。
さて今回、梅安はどんな悪人を成敗するのか。殺しを依頼する者(起り)と、標的にされるワルの間に、どんな恨みが渦巻いているのか。梅安の抱えるどんな心の闇を垣間見られるのか。大作への興味は尽きず、期待は膨らむ一方だ。いざ、映画館へ。
●『仕掛人・藤枝梅安2』
4月7日(金)より新宿ピカデリーほか全国公開
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