川端康成の「伊豆の踊子」の小説の舞台となった伊豆半島。緑深い山並み、豊かな海岸線、沖合に浮かぶ島影、湯煙をあげる温泉郷と、その風光明媚さは今も変わらない。余りに東京に近いため、ともすると旅先としての魅力を忘れがちになってしまうようだ。
天気の良い日に、ふと旅気分になって伊豆へ向かった。熱海から伊豆の東海岸線を走る、「キンメ」という金目鯛にちなんだ赤い列車に乗り込む。海側には窓に面したソファのような座席で、山側のそれは通常の向いあった造りになっている。往復で違う景観を楽しんでもらおうという計らいらしい。
熱海から下田まで1時間半ほどかかるそんな鈍行列車で、水平線を背景に車窓に広がる東伊豆の風光を満喫する。途中地元の人々が乗り降りするのも、生活感があっていい。1時間ほどで湯煙が随所で立ち上る、坂の温泉町、熱川に着く。
東伊豆を代表する泉質と湯量を誇る古くからの温泉郷だ。室町時代の武将で江戸城の築城主、太田道灌が川辺の湧き水で傷を癒やす猿を見て、温泉を発見したという。
小さな木造の駅から、海に向かって川沿いに(熱川だろうか)坂を下ってゆく。レトロな風情と鄙びた静かさに、打ち寄せる太平洋の潮騒が木霊する。昭和のテレビ・ドラマ「細腕繁盛記」の舞台として、多くの観光客が訪れ賑わったというが、今では廃業した温泉宿も少なくない。
歩いても数分ほどの海辺に、猿を従えた太田道灌の銅像が立つ。その背景にそびえる白い瀟洒な建物が、新生熱川オーシャンリゾートだ。全75室がオーシャン・ビュー、全面の窓からは目の前の相模灘と伊豆七島の絶景が堪能できる。
ホテル前の芝地はドッグ・ランで、海風と一緒に犬が遊んでいた。豪壮な車寄せのあるエントランスとは別に、ドッグ・ランの脇にはペット同伴専用のエントランスが。すっきりと白を基調にしたゆとりのロビーに、温泉宿とは違うリゾート感に包まれる。
客室のベランダからは、海辺の町並みも一望にできる。すぐ真下には太田道灌の像、その横には熱川第一源泉道灌の湯と称される共同の洞窟風呂があったらしいが、現在は閉鎖されている。
川の対岸の海辺には、湯泉槽が立ち、足湯処を設けた熱川ほっとぱぁーく。その向こうには、東伊豆町では唯一の砂浜、熱川YOU湯ビーチが広がる。
ホテルから2~3分のビーチは、7月下旬からの海開き前は、サーファー達に人気だ。朝日を浴びながら、水平線に浮かぶ伊豆7島を従えたビーチ・ウオークがお勧め。
ベランダ越しに、海に張り出したテラスのプールが煌めくのが見下ろせた。それに誘われ、プール・サイドへ。涼し気なパラソルの下で、波音と海風に翻弄されながら冷たいドリンクを飲む。
まるで、海を航行するクルーズ船のプール・サイドにいるよう。心地よい水温のプールで、ゆっくりと四肢を動かしていると、水平線の島まで泳ぎ着けるような気がした。
プールから上がり、肌の疾病や美肌に効くという温泉で寛ぐ。メタケイ酸をたっぷり含み、僅かに塩味がする源泉かけ流しだ。露天風呂から望む伊豆の島影に、なぜか随分と遠くに旅している気分に。
湯浴みの後は、バラエティに富んだ伊豆の山海の幸が並ぶブッフェ・レストラン、もしくは東伊豆名産の伊勢海老のブイヤベースが好評のイタリアン・レストランへ。一帯で日本一の水揚げを誇る金目鯛は、季節を問わず堪能できる。
食後は満点の星空が降り注ぐプール・サイドで、夜風に涼みながらコーヒー味わう。同じ階にあるスパからのハーブ・オイルの香りに魅かれて、本場スリランカからのアーユルベーダ―を受ける。心身のバランスを整え、毒素を排出するという薬草オイルで頭からつま先まで全身マッサージ。温泉地の指圧とはまた違い、優しい波のようなストロークがリラックスさせてくれた。
客室に戻ると、軽くなった心身が眼下に打ち寄せる潮騒に運ばれていくような、深い眠りに誘われた。そして、目覚めは朝日に薔薇色に輝く水平線と伊豆の島々に迎えられた。
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