八ヶ岳山麓標高960m、小淵沢の森の中に、1990年代初めにイタリアの瀟洒な街並みが出現した。イタリアの著名建築家、マリオ・ベリーニのデザインによる7.5haに及ぶ広大な高原リゾートだ。
2001年に星野リゾートして新生開業、ダイナミックなリニューアルで施設を拡大、ファミリーリゾートとして人気を博しながらも、ワインリゾートとしても進化を遂げている。
リゾートの中心は全長150m、飲食店や雑貨店など19軒の商店が並ぶピーマン通り。中央には高さ15mのベリーニ・タワーが建ち、宿泊者でなくても八ヶ岳を望みながら散策が楽しめる。
通りに沿ったレジデンス風の客室は、森の野鳥の囀りと週末の朝市の賑わいで起こされる。まるでイタリアの小さな村にいるような朝に迎えられた。
ピーマン通りでは、季節ごとに様々な趣向を凝らしたイベントが開催され、イタリアのピアッザ(広場)のように人が集う和やかな場所に。秋はハロウィーン祭りの後に、11月は「焚火ワインサロン」として、焚火を囲みながら地元ワインのヌーボー(新酒)や、焼き栗など秋の味覚が楽しめる。
このピーマン通りの石畳の回廊沿いに、レジデンスタイプの客室が69室(長期滞在向けにキッチン付きのものも)。ファミリーでも利用できるゆったりした造りで、暮らしているような滞在が。一方、ロビーやメインダイニングのある本館には、イタリアン・タッチの色合いがモダンラグジャリーな客室が103室。ワインをテーマにした工夫がインテリアの随所に凝らされている。
芝地に面した約70㎡の客室4室は、ペットと共に過ごせるように、ケージに発想を得た洒落た格子の引き戸で、人との住空間を自由にアレンジできる。ペット用のアメニティも充実。ペットもファミリーの一員として、居心地よくリゾート滞在ができる。
ワインリゾートとして、2006年に地元のワイナリーと提携。日本最大のワイン生産地山梨県にあって、ワインとそれにあう食事を楽しみ、葡萄畑の景色を愛で、醸造所を訪ね、ワインの世界を体験することができるように。
ホテルのロビーラウンジでは、曜日限定で19時と20時から「ワインの学校」を開催。試飲しながら初心者にもワインの奥深さを学べる。
リゾートのワインショップは、厳選した地元ワイン24種の飲み比べができる。ここで購入したワインはリゾート内の飲食店に無料で持ち込める。ワインを好きな量でテイクアウトできる専用の木箱も用意。
メインダイニングでは、旬の野菜を主役に、繊細な味わいの10コースの創作イタリア料理が。一皿ごとにペアリングした地元ワインとのマリアージュが堪能できる。
ビュッフェに出来立てのグリル料理が人気のカジュアル・レストランの方でも、地元ワインがカラフェで用意されている。朝食は新鮮な高原野菜や旬の果物が、彩も豊かに並ぶ。
リゾート内のダイナミックなレジャー施設の中でも、全長60m、白いビーチと高さ1.2mの波が打ち寄せる屋内プールは、まるで森の中の海。浅瀬で水遊びも楽しめる幼児用のプールも。
地上5~7mの樹林の間を一本橋やジップラインなどで周遊する、スリル満点の「森の空中散歩」。同じエリアに今年夏から、高さ10mのクライミングウォールが加わり、大人気だ。
昨秋から登場した、ユニークなプライベート・オフィスが「テレワークゴンドラ」。スキー場のゴンドラを改造したもので、大型デスクはもちろん、Wi-Fiなどを備えた個室仕様で、仕事に集中できるというもの。ピーマン通りの一画に設置され、宿泊者は無料利用できる。
全ての施設は飲食店含め、高水準の抗ウィルス処置と感染対策を徹底している。
リゾート内にあるアクティビティセンターは、トラベル・エージェントのような店構えで多様なアクティビティをアレンジしてくれる。ずらりと並んだマウンテンバイクを借りて気軽に周辺の森林サイクリングへ。
夏・秋は湖でのカヤック、冬はスノーシュー…両方ともペットと共に遊べる。近くの果樹園でイチゴやサクランボ、桃、葡萄、フルーツ狩り、あるいはワイナリー訪問もいい。
一番のお勧めは、乗馬だ。騎馬軍団で名を馳せた武田信玄の郷は、今も馬牧場がたくさんあり、10以上の乗馬クラブが。初心者でも楽しめる森林の中を縫う、信玄の軍用路「棒道」。馬の背にゆられて、父を追う松姫気分に。
圧巻のツアーは、標高1420mの富士見高原への天空カート・ツアー。八ヶ岳はもちろん、富士山も望みながら、山頂まで約30分。山頂のハイキングコースのベンチでお弁当を。遊び疲れてリゾートに戻れば、樹林に囲まれた屋外の温浴施設でゆったり四肢を伸ばして。豊饒な樹林の空気は、わずかに甘美なワインのような香りを孕んでいた。
●星野リゾート リゾナーレ八ヶ岳 TEL0570-073-055
※『Nile’s NILE』2021年9月号に掲載した記事をWEB用に編集し掲載しています