島の中央にある標高100m近い大岳の頂上からは、周辺のサトウキビ畑と牛の放牧場、点在する集落、そして、八重斬列島の大半の島々が見渡せる。この島の南東端、ビルマ崎に 1979年に開業した「はいむるぶし」。40万平米の手入れの行き届いた庭園風の敷地に、13棟(148室)ほどの低層の客室棟が点在する。
中央の岡にあるセンター棟のレストランやプールなどを遠巻きにするように、展望大浴場、スパ、ヨガルーム、昆虫博物館などの施設がある。涼し気な水を湛えた池が4つ、その内の一つには水牛が2頭。このほかにも、リゾート内には乗馬用の馬、山羊、鷹、アヒル、リクガメなどが飼育され、心地よい緑と海に囲まれてのんびりと過ごす動物たちにも心身が和む。
敷地内には亜熱帯の植物を集めた小さな植物園、グラウンドゴルフ場、夕陽を眺めるための広場、ライブ会場などと屋外で楽しめる施設も多い。敷地の東端には白浜のビーチがあり、散歩コースやカフェなどが設けられれている。1kmほど離れているので、センター棟からビーチまでカートによるシャトル・サービスが。
広大な敷地を自由に動き回りたいゲストにはレンタル・カートがあり、海風と共に走り回る爽快感を味わえる。敷地外に出たい場合は、自転車やスクーターも。敷地内で練習してから外に出られる三輪バイクのバギー・ツアーも人気だ。浜辺を小馬で散歩できるのもここならでは。ビーチでは多様なマリンスポーツが用意され、リゾート内だけで過ごしても十分楽しめる。染色やシェルアクセサリーなどの雨でも楽しめるクラスも。
レストランは、地元の旬の食材をふんだんに取り入れたブッフェダイニング、コース料理を中心にしたクラブダイニング、軽食やスィーツのオープンカフェ&バー、 屋外のバーベキューなどが人気のグリルダイニング…ビーチの海Caféは、潮騒を聴きながらイタリアンに合うワインを選んで、まったりした夜を。
オーシャンビュースイートの客室は、絨毯を引いたような緑の芝地が群青の海がテラス越しに続く。海辺にそよぐ一本のヤシの木に見守られながら、テラスのハンモックでまどろむ。心地よい亜熱帯の海辺は、東京から意外に近い。はいむるぶし(沖縄の方言で南十字星のこと)が昇るまで、丸一日ゆっくりと心行くまでリゾートで過ごす。
即席のものと異なり年月をかけて熟した、いいリゾートは大人の心身を優しく開放してくれる。プールサイドでランドスケープを愛でながら寛ろぐ。奇妙な赤い実をつけたあだんの木やガジュマロが鬱蒼と茂るミニ・ジャングルのようなあだんの森を探検する。
300mに渡って続く白浜は、ほとんどプライベート・ビーチ感覚で過ごせる。波打ち際で遊びながら、途中で見つけたブランコ。歳を忘れて、夕陽に向かって大きく漕いでいた。その裏手の原っぱにドライブイン・シアターのようにデッキチェアが並べられているのは、星空を鑑賞する特別席だ。
素朴な色とりどりの沖縄ガラス・ランプが照らす道を、水平線から傾いて覗いていた南十字星を担ぐように、カートを走らせて帰った。
ホテルではリゾート内のアクティビティに加え、小浜島周辺や他の離島へのツアーなども催行している。小浜島周辺は国内最大ともいわれる天然珊瑚礁を誇る海洋国立公園、石西礁湖が広がる。ダイビングはもちろん、手軽に楽しめるシュノーケリングの天国だ。
ウミガメやマンタと泳ぐコースは人気で、幻の島と称される珊瑚砂でできた弓型の島にも上陸できる。満潮時には海中に消えてしまう儚い小島だが、群青の海に白く光り輝く姿は艶やかな存在感があり、そのインスタ映えにウェディング撮影などにも人気とか。
さらに沖に出てリゾート・フィッシングにチャレンジ。忍耐心を要する釣りではなく、クルージングを楽しみながらのフィッシングだ。大ぶりのハマダイなどが初心者にも釣れ、ホテルに持ち帰ると料理してくれる。地元の居酒屋なども覗いてみたければ、送迎サービスが。
夜の展望風呂は海に代わって、満天の星空が眺められた。かすかに聞こえてくる島唄のライブに合わせて、湯煙で南十字星がペンダントのように揺れた。
●はいむるぶし TEL0980-85-3116
※『Nile’s NILE』2021年5月号に掲載した記事をWEB用に編集し掲載しています