東京湾アクアラインの開通で、東京と驚くほど近くなった房総半島。房総半島自体は東京都の倍以上の面積があり、海と豊かな緑の織り成す広大な自然の宝庫となっている。
アクアラインを降りて南房総の南端までのドライブは、東京の隣県とは思えない深い山並みや田園地帯を抜け、時折内房の海辺を望みながら1時間余り。色鮮やかな季節の花に迎えられる房総フラワーラインの一本海側に、ヤシの木が連なるシーサイドの国道401号線。その白浜町の入江沿いに「白浜オーシャンリゾート」がたたずむ。
南房総、国道401号線の海側に位置する唯一のホテルだ。ホテルの芝の庭とプールサイドがそのまま海辺に続き、全客室の大きな窓からは180度、外房の海のパノラマが満喫できる。水平線に上る朝日と野島崎半島の灯台に沈む夕日が望めるのも、房総半島南端というロケーションならでは。新月の夜には、目の前の太平洋を天の川が覆う。
南房総は、東京湾に面した内房の海と太平洋に面した外房の海に囲まれた半島だ。中央は小高い丘陵地帯で、森林や果樹園が広がる。1958年に国定公園に認定され、海辺はリゾートとして人気を集めるように。
今ではビーチだけでなく、ハイキングやサイクリングなどのアウトドアスポーツ、温泉、花畑、いちご狩り、びわ狩り、みかん狩りなど、さまざまなレジャーの地となった。黒潮の影響で通年穏やかな気候は、避暑地としてだけでなく避寒地にも。
南房総市内には8つの道の駅がある(市としては日本一)。どれもユニークな工夫を凝らし、地産の食材や物品の店、飲食店などが旅行者を迎えてくれる。
白浜には日本初の洋式灯台が立つ野島崎がある。岩磯に囲まれた景勝地でミュージアムや神社、アートをめぐる遊歩道が整備されている。7月には海女祭りの舞台となり、松明を掲げた海女が100人余り、幻想的な夜泳を披露する。
房総半島は現在でも、日本最大の伊勢海老の産地。白浜オーシャンリゾートの前の磯でも、伊勢海老やアワビが獲れるという。が、残念ながら磯遊びでこれらを獲るのは禁止されている。
その代わり、ホテルのレストランでは旬の海と山の幸が満載のビュッフェが楽しめる。加えて、個室での夕食は伊勢海老やアワビの踊り焼き、金目鯛の煮付けなど、地元が誇る宴のような食事が堪能できる。
房総の郷土料理でもあるなめろうは、それを焼いたさんか焼きが朝食に。また、近郊の捕鯨基地である和田漁港で水揚げされたツチクジラも、夏の名物だ。
また白浜は日本で最大のキンセンカの産地でもある。花を使った彩りあふれる花料理もぜひ。房総の豊かな自然に癒やされながら、その風土の実りを享受する滞在は、心身に優しい滋養の旅に。
白浜オーシャンリゾートのシーサイドガーデンには、ドッグランやドッグプールが設けられ、カジュラルでリラックスした雰囲気に一役かっている。
客室50室余のうち、一階のテラス付きのものに愛犬と宿泊できる。ペット専用のエントランス、ペット用アメニティも。また、レストランのテラス席の一画が愛犬と同席できるように工夫されている。
海辺を散歩するさまざまな犬とどこか類似する飼い主を観察するのも、面白い。愛犬たちはまさにファミリーの一員として扱われているようだが、日本のホテルではまだまだ犬を同伴できるところが少ないようだ。
太平洋の潮騒に遊ぶ犬と家族たちを眺めなら、愛犬の八房を婿にした伏姫に始まる物語「南総里見八犬伝」を思い起こす。姫と愛犬が過ごしたとされる籠穴が、南房総の山中にあることは余り知られていない。
愛犬と過ごすリゾートは、西欧独自のものでも、格別新しいコンセプトでもないのかもしれない。
●白浜オーシャンリゾート TEL0470-38-2511