望外に快適で上質な乗り味
2+2シーターのオープントップモデル「カリフォルニアT」の後継であるポルトフィーノ。最大の特徴は、リトラクタブルハードトップにより、流麗なファストバッククーペとエレガントなスパイダー、二つのボディタイプを1台に融合していることだ。いずれの状態でも、その姿は息をのむほどに美しい。
走り出してまず印象的なのは、タウンスピードでの走りの上質感だ。例えば3.9リッターV8ターボは、シャープな吹け上がりと天井知らずのパワーを誇りながら、低速域では最高出力600psの超高性能ユニットであることを忘れてしまうほどにジェントルな振る舞いを見せる。
上質な走りに一役買っているのが、7段F1デュアルクラッチトランスミッションだ。そのスムーズさは、一般的なオートマッチックと遜色ないといっても過言ではない。
特筆すべきはオープンエアドライブ時の快適性だ。120km/h程度では車内への風の巻き込みはわずかで、助手席の人との会話も楽しめるほどに静粛性も確保されているから、積極的にオープンドライブを楽しみたくなるのだ。
グラマラスなライフスタイルが喚起される
もちろん、試乗の舞台がワインディングロードに変ると、フェラーリの名に恥じない胸のすくような走りを披露してくれる。優雅なクーペ/スパイダーのポルトフィーノにも、サーキットを出自とするフェラーリのDNAは息づいているのである。
とはいえ、例えばサーキットのラップタイムに象徴されるような“速さ”は、ポルトフィーノの魅力を語るうえで、あまり意味をなさないのではないか。
例えば、フェラーリの代名詞ともいえるミドシップモデルの488は、週末、サーキットでエキサイティングな走りを楽しむようなユーザーのニーズに完璧に応えてくれる。
一方、ポルトフィーノのルーフを開け放ち、程よく刺激的なV8サウンドを堪能しながらステアリングを握っていると、隣にはパートナーがいて、海辺や高原のラグジュアリーなリゾートを気持ちよく流しているようなイメージがふつふつと湧いてくる。フェデリコ・フェリーニの『甘い生活』に描かれているようなグラマラスなライフスタイルが喚起されるのだ。
きっと、そんなシーンに一分の隙もなくマッチすることこそが、ポルトフィーノの特徴であり、魅力なのだろう。名は体を表すというが、麗しき海辺の高級リゾートの名を冠したフェラーリの最新モデルは、まさにその好例なのだった。
●フェラーリ・ジャパン
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※『Nile’s NILE』に掲載した記事をWEB用に編集し再掲載しています