水平線に現れる小豆島はその可愛らしい名前にもかかわらず(古代にはあずき島とも)、中央に817mの星ケ城山がそびえる(瀬戸内海の島では最高峰だ)、ドラマチックな景観で水平線に迫ってくる。
「リゾートホテルオリビアン小豆島」は、オリーブ畑などの豊かな緑囲まれた夕陽ケ丘の上、16万㎡におよぶ広大な敷地に立つ。その広大なガーデンのようなランドスケープには、テニスコートが17面、ミニゴルフコース、プール、ドッグランなどが設けられている。
リゾートから望む瀬戸内海の夕陽は、日本の夕陽百選の一つ。サンセットには白壁のホテルと、近くの山中にそびえる小豆島大観音が薔薇色に染まる。
人口2万8000人ほどの島の中心は島の西端にある土庄港で、フェリーの運航数も多い。ホテルまではシャトルバスが運行しており、30分ほどの道のり。夏場は島の西南にある、遠浅の鹿島ビーチにも送迎バスが運行している。
港の近くの古い町並みは「迷路の町」と称されるほど、細く入り組んでいる。昔、海賊などの襲撃に備えたものらしい。町中には、ギネスブックで世界一狭いと認証されている土渕海峡がある。
港まわりには神社仏閣が多いが、島には町中はもちろん、山や海辺などに小豆島八十八カ所と呼ばれる霊場がある。パワースポットの島とも言われるゆえんだ。
港から夕陽が丘に向かう道にも小豆島大観音と並んで、いくつもの寺院や神社が点在する。中でも宝生院は、応神天皇がお手植えしたとされるシンパクの大樹が見事だ。樹齢1600年、国指定の特別天然記念物だ。
太古の時を刻むようにうねる太い枝が天を支えるように四方に広がる。その下に立つと、精霊の手の中で守られているのかのような安らぎを覚えた。
100室余りの客室は、夕陽側か朝日側かを選ぶことができる。どの客室もゆったりとしたバルコニーが付いているのがうれしい。家族連れなどがくつろげる和室も20室ほど用意されている。また、ペットも同伴できる客室が数室あり、広いドッグランと合わせて好評だ。
プール、テニスコート、ミニゴルフ、ピンポン、散策路など多様な施設が備わっている。アクティブな一日の終わりには、筋肉痛にも効く天然温泉へ。「オリビアンの湯」は、約30万年前に降った雨水が濾過された、淡く濁った、まったりとした湯だ。大風呂はもちろん、瀬戸内海を望む露天風呂は開放感に心身が癒やされる。
レストランは瀬戸内海の旬の食材をふんだんに取り入れた和洋の料理が並ぶ。小豆島は半世紀前に植林されたオリーブの日本最大の産地となり、地中海タッチの料理も多い。
一方で、醤油や素麺など和の名産品も。ホテルのオリジナル、ユニークな素麺ガレットはぜひお勧めだ。
小豆島の中央にそびえる寒霞渓は、日本三大渓谷美の一つとも。山頂からの瀬戸内海の展望、そして、ロープウェイの空中散歩は四季折々の景観が楽しめる。
島の東端には「二十四の瞳」のロケ用オープンセットが映画村に。その近くは、「醤(ひしお)の郷」と呼ばれる醤油蔵や佃煮やが軒を並べる町並みがある。国の有形文化財ともなっている合掌造りの蔵もあり、400年前にさかのぼる醤油作りの歴史が息づく。
質のいい塩田と、隣接する坂手港が伝統の醤油造りを培った。小豆島の多様な産物は航路で本土に広まった。島の北東部にある福田港からは、神戸や姫路への船便が出ている。
島の北岸を回わる路線バスで福田港へ向かった。海沿いにのどかな漁村と、4世紀ほど昔に大阪城築城に際に始まった採石場が点在する。
風情あふれる福田港のターミナルから神戸港まで3時間の船旅。航路には、忙しく小船が行き交う家島諸島。瀬戸内海には300以上の有人島があるという……島文化を育む瀬戸内海の豊かさを、小豆島は垣間見せてくれた。
●リゾートホテルオリビアン小豆島 TEL0879-65-3211
※『Nile’s NILE』2020年7月号に掲載した記事をWEB用に編集し掲載しています