飲食店が充実している那覇市内では、ホテルに宿泊しても夕食は外で食べるというゲストが多い。だからこそ「食で勝負」すると言い切るのが、昨年9月に誕生した「沖縄エグゼス那覇」だ。県内に多数のホテルを展開するかりゆしグループの最高峰ブランド、エグゼスの3件目として誕生した、那覇でも随一のラグジュアリーなシティリゾートである。
国際通りまで徒歩4分、那覇空港からは車で10分という好立地にありながら、最上階に4室用意されたヴィラスイートでは、プライベートプールで沖縄の青い空を独占できる。リラックスできるよう、朝食は全室ルームサービスで提供されるというのも特徴だ。チェックイン後、客室のテレビモニターで朝食の配膳時間を予約するシステム。希望すればドアの前に置いてもらうこともできる。
沖縄の料理には「医食同源」の考え方が浸透している。バランスの取れた食事で病を予防し、美と健康を保つのだ。朝食もこの思想が反映された、彩り豊かなメニュー。海ぶどうサラダ、ゴーヤー白あえ、青パパイヤの炒め物など、野菜を多く取り入れたさっぱりとした味付けなので、楽しみながら最後まで味わえる。
「食」をメインにしたリゾートを目指すにあたり、各地から優れた食材をよりすぐり、メニュー開発に臨んだという「沖縄エグゼス 那覇」。その成果を遺憾なく発揮しているのが、1階にある「鉄板焼 天」である。
「牛肉は赤身と脂のバランスが取れた、沖縄県産の本部(もとぶ)牛山城(やましろ)牛にたどり着きました。野菜はかりゆしグループのファームや契約農家から、おいしいものだけをピンポイントで仕入れています」と、深谷映二料理長。
肉は塩コショウをせずに鉄板に乗せ、じっくりと静かに焼く。繊細な焼き上がりを音で聞き分けたら、外はカリッと、内側はジューシーな状態でサーブされる。肉本来の味が楽しめるよう、屋我地(やがじ)島産の天然海塩を少々つけて。しみ出すような脂の甘みと旨みを堪能しつつ、さっぱりしているのでいくらでも食が進む。
コースは和牛をメインに「あぐー豚のトマトスープパスタ」や「近海魚のポワレ キノコのソース トリュフ風味」など、鉄板焼でありながらオリジナリティーあふれる琉球フレンチが味わえるのも魅力。ココットを使って鉄板の上で生米から炊いた、締めの「美ら海マグロの茶漬け」が、優しく体に浸みわたる。
アジア諸国との貿易で栄えた琉球王国では、独特の料理文化が発達した。中でも役人歓待の席で振る舞われた高級料理が、琉球宮廷料理だ。庶民の食文化とは一線を画すため目にすることは少ないが、「琉球 Loo-Choo」では、この琉球宮廷料理を現代によみがえらせた。
その中心となるのが、琉球漆器「東道盆(トゥンダーボン)」に丁寧に盛り付けられた料理だ。豚肉でごぼうを巻き、甘辛く煮込んだグンボーマチに、豚肉のすり身と白身魚のすり身を混ぜ合わせたシシカマボコ、高級食材として重宝された昆布巻きのクーブマチ。客人に沖縄の発展した文化を証明する料理なので、甲イカを飾り切りにした花いかなど、包丁技術を披露した料理も含まれている。
「琉球宮廷料理では出汁が命です。かつお出汁と、豚の背骨やげんこつを使って、2~3時間かけてとる豚出汁を、料理に合わせて配分を考えながら使います」と、名嘉剛志総料理長。
東道盆では伝統のスタイルを忠実に再現しつつ、沖縄では食べる文化のなかった刺し身なども取り入れた創作郷土料理をコースで。チョウメイソウやハンダマなど沖縄野菜を使った料理も供される。
沖縄では、栄養のあるおいしい食べ物を「ぬち(命)ぐすい(薬)」という。そしてそれこそが、「沖縄エグゼス 那覇」の全ての食事に共通する
テーマだ。街に出ずとも、ホテル内で多彩な料理を堪能できる。
バーでありながら本格的な鮨(すし)をコースで提供する「Sushi&Bar Taira」では、ビルマ(ミャンマー)チークの一枚板のカウンターの先に、バーテンダーと鮨職人が並んで立つ。鮨やつまみを味わいながら、日本酒や白ワインなどをゆっくりと楽しめるのがうれしい。沖縄県産のイラブチャーやクルマエビなど、近海の上質な魚にこだわるため、鮨を頼む場合は3日前までの事前予約が必要となっている。
食後は泡盛の古酒やオリジナルカクテルを飲みながら、ガラス張りの窓から通りの景観を眺める。ホテル2階の屋外プールにも隣接しており、プールサイドでドリンクを楽しむことも可能。街中で、これだけゆったりとしたプライベートなリゾート感が味わえることには驚くばかりだ。
快適な空間に心の底からリラックスし、沖縄の自然の恵みを豊富に受けた滋味あふれる料理を味わうことで、明日への活力がわいてくる。
※『Nile’s NILE』2020年3月号に掲載した記事をWEB用に編集し掲載しています