どこまでも理想を追い求めて
スポーツカーは、乗る人の数はそう多くないのに、どうしてなくならないのだろうか。それは、技術のショーケースであると同時に、走る楽しさを第一義におく自動車メーカーの気概の表れだからだ。
NISSAN GT-Rは、世界に誇れるスポーツカーだ。ポルシェではいえば911、アストンマーティンでいえばDBシリーズのように、2プラス2のグランツーリスモ的なキャラクターを持ちながら、ドライブの楽しさを極めた希有な存在だ。
毎年のように“進化”を続けるGT-Rの2020年モデルが2019年6月に発売される。2020年モデルは、妥協することなく「速さの質」を追求し、加速やハンドリングにこれまでに培ってきたレーステクノロジーを惜しみなく投入することで、さらなる深化を遂げていることがうたわれている。
注目すべきは、まずNISSAN GT-R NISMOにも用いられている、レスポンス向上に貢献するターボ高効率化技術「アブレダブルシール」の採用だ。もう一つは、Rモード専用のアダプティブシフトコントロールの見直し。眼目は、街乗りからサーキットまで、コーナリング時のシフトスケジュールをよりアグレッシブ(高めの回転を維持するよう)に設定している点にある。
コーナーに入っていく時ブレーキングすると、早めに低いギアにシフトダウンし、より鋭いコーナー進入と同時に、再加速時の駆動レスポンスを向上させるというプログラミングも採用された。ブレーキは軽い踏力で効きが立ち上がるコントロール性の良さが追究されているのだ。
サスペンション設定も2020年モデル専用に。これらを統合して、「ドライバーがより安心して意のままに操れるクルマとする」ことが目指されたと日産自動車では説明している。
根幹にあるのは、「日本を代表するスポーツカーと呼ばれたい」と、GT-Rの開発に携わってきた日産自動車のチーフ・プロダクト・スペシャリスト、田村宏志氏の熱い思いだ。
すばらしいのは、先に触れたように、年ごとの“進化”が論理的というか、一気通貫していることだ。田村氏は「ここ数年、GT-Rの“GT”の面をしっかり作り込んできました。今は“R”の要素を追究しています」と語っている。