スポーツカーには、大きく言うと、二つの楽しみがある。
一つは見せびらかす楽しみ。もう一つは、アルピーヌA110に代表される、わかる人にはわかるクルマに乗る、ちょっとひそやかな楽しみだ。愉悦という言葉がもっとぴったりくるかもしれない。
A110はフランスの生んだスポーツカーだ。工場の生産キャパシティーの問題から、デリバリー数が限られているので希少性も高い。乗っていると、クルマ好きが「あ、アルピーヌだ」と振り向く。イタリア製のスーパースポーツカーだって、今やそんなことは起きない。そして希少性だけではない。スポーツカーとして、注目すべき存在である。
アルピーヌは1950年代から70年代にかけて、優れたスポーツカーを作り、モータースポーツにも積極的に参加した。ミッレミリアを始め、世界ラリー選手権やルマン24時間レースでの高成績で名声を確立したのだ。