蒼穹の天使たち

その輝きは地中の奥深く、誰も知らない場所に眠っている――ダイヤモンド。原石を磨いて、削って、何万光年前の輝きを取り戻す。その鉱物としての神秘性や、環境によっての輝き、色合いの違いに魅了される人も多い。見ていると、吸い込まれそうになるこの怪しげな輝きこそ、今の時代は信じるべきなのだろう。

Photo Takehiro Hiramatsu(digni) グラフ、ブシュロン、バックス&ストラウス Text Rie Nakajima グラフ、ブシュロン Yasushi Matsuami バックス&ストラウス

その輝きは地中の奥深く、誰も知らない場所に眠っている――ダイヤモンド。原石を磨いて、削って、何万光年前の輝きを取り戻す。その鉱物としての神秘性や、環境によっての輝き、色合いの違いに魅了される人も多い。見ていると、吸い込まれそうになるこの怪しげな輝きこそ、今の時代は信じるべきなのだろう。

グラフのダイヤモンド
写真提供/グラフダイヤモンズジャパン

ダイヤモンドは有望な「投資先」~その魅力を再考する~

ダイヤモンドは、そのまばゆいきらめきで昔も今も人々を魅了してやまない。採掘量が極めて限られていた18世紀初頭までは、王族や貴族など限られた支配層だけが手にできる、宝石の中の宝石であった。

1725年にブラジルで最初のダイヤモンド漂砂鉱脈が発見されてからは、採掘量が増加し始め、徐々に一般の富裕階層にまで広く浸透していった。とはいえ、その希少性や価値評価は、変わることはなかった。

それは第一に、研磨技術の高度な発達に伴って、ダイヤモンドの輝きが増す一方、原石のロス率が高まったことにより、一層贅沢な宝石としての価値を高めたからでもある。また、1888年に設立されたデビアス社が長きにわたって、原石の需要と供給のバランスを図り、市場での価格形成を安定化させることに、資してきたことも見逃すわけにはいかない。

後にデビアスの存在を脅かすライバルが現れ、現在、原石の売り手となる鉱山会社のシェアは、デビアスが約4割、ロシアのアルロサが約3割、英豪系資源大手のリオ・ティントが約1割となっているが、共存共栄の関係にあり、間違っても安易な値下げ競争が繰り広げられるようなことはない。

鉱山各社は、採掘した原石をインドやイスラエルに集積する研磨加工業者に販売し、それがカット済みのダイヤモンドとして市場に流通する。これが最終的に宝飾品メーカー、小売店などを経由して、一般顧客の目に触れるわけだが、ここで重要なのは何より「ブランド力」だ。

古くからよく知られる有名ジュエラーはもとより、近年は注目度や知名度を大いに高めている有力な新興ジュエラーの存在もある。彼らがこうして築き上げたブランド力こそが、ジュエリーや時計などといったダイヤモンド製品の価値をさらに高めているわけだ。

実のところ、2014年後半からダイヤモンドの国際価格は、全体に少々低下傾向をたどっている。中国やインドなど新興国の需要が、減少気味になっていることが主因だが、今後のアジア市場全体の計り知れない拡大余地を鑑みれば、これは一時的なものと考えていいだろう。

リーマン・ショック以降、主要国がそれぞれに極めて大胆な金融緩和政策に踏み切り、総じてペーパー・マネーの実質的な価値が毀損(きそん)する傾向にあるため、それだけ実物資産としてのダイヤモンドの存在価値は高まっている。まして、一時的にも円高傾向が強まったような場合には、それだけダイヤモンドの円建て価格が「割安」になるということも念頭に置いておきたい。

なお、ここにきて「ダイヤモンド投資取引所」創設の構想が取り沙汰されていることも注目に値する。将来的には先物市場の創設も視野に入るとされ、これはダイヤモンドが有望な「投資商品」の一つとして認識されているという証しでもある。(経済アナリスト 田嶋智太郎)

GRAFF

比類なき宇宙のかがやき

グラフのリング
(左)“ザ・グラフ プロミス”リング Pt╳YG╳イエローダイヤモンド13.02ct╳ダイヤモンド1.04ct、183,000,000円 
グラフが得意とするカラーダイヤモンドの中でも、イエローダイヤモンドは世界のトップシェアを誇る、メゾンこだわりのダイヤモンドだ。この13.02ctのイエローダイヤモンドは、おそらく日本国内では最も大きい最高品質のもの。個性的かつ魅惑的なイエローのこぼれるような高貴な輝きが、他を寄せつけない特別な存在感を放つ。
(右)“ザ・グラフ フレーム”リング Pt╳PG╳ダイヤモンド5.01ct╳ピンクダイヤモンド0.73ct、176,000,000円 
ダイヤモンドは、大粒になるほど希少価値を持つ。グラフが生み出すのは、原石の買い付けからカッティング、デザインまで一貫して手がけるからこそ実現する、大粒で極上のダイヤモンドジュエリーだ。純粋無色のDカラー、肉眼で内包物や傷が見えない最高級ダイヤモンドをたたえるようにパヴェダイヤモンドを敷き詰めた「ザ・グラフ フレーム」のリング。

「キング・オブ・ダイヤモンド」の異名を持つグラフ創業者で現会長のオフィサー、ローレンス・グラフの元には、世界中の究極のダイヤモンドが集結する。イギリスでロシア系移民の家庭に生まれながら、15歳でロンドンのダイヤモンド街で工房見習いとして働き始めて以来、天賦の才能で瞬く間に頭角を現した。アジア諸国や中東の王族、石油王などの信頼を得て、ハイジュエラーとして不動の地位を築いていった。常に「より大粒で、より極上な、完璧で価値のあるダイヤモンドを生み出したい」と願うグラフのあくなき情熱は、世界一大きなヘプタゴン・カット(7角形)の「ザ・パラゴン」137.82ctを始め、過去に五つの当時世界最大級のDカラー、フローレス(完全無色無傷の最高品質)の伝説的ダイヤモンドをカットしたことにも表れている。こうした実績により、世界の大粒ダイヤモンドが枯渇したといわれる中、グラフだけがカラーダイヤモンドも含め希少性の高いダイヤモンドを発表し続け、世界で唯一のダイヤモンド・ハイジュエラーとして独自の道を切り開いている。

●グラフダイヤモンズジャパン TEL03-6267-0811 www.graff.com/jp-ja

BOUCHERON

時を超える希有なるギフト

ブシュロンのブローチ
メヘンディ ブローチ WG╳ダイヤモンド26.35ct、68,148,000円 
ブシュロンのクリエイティブディレクター、クレール・ショワンヌが、ジョードプルのマハラジャ、ガジ・シン2世の後援を受けて生み出したコレクション「ブルー ドゥジョードプル」より。インドの女性たちが体に施すヘナアート、メヘンディにヒントを得て作られた、空気のように軽やかなブローチ兼ネックレス。ジュエリーの限界に挑戦したブシュロンならではの一作。

「石は鑑定書だけが全てではない。それぞれの個性を見て買いつける必要がある」と、ブシュロンのストーンバイイング・ディレクター、ティエリー・ロベールは語る。ブシュロンの“石の探究者”であった彼の父から情熱と奥義を伝授された、親子2代続く宝石のエキスパート。世界中を旅しながら、毎年、何十万個もの石をえりすぐって購入する。旅にはコンパスが欠かせないという。それによっていつでも正確な方角を知り、宝石の質を見極めるために最良の光を得るためだ。業界一の目利きであるロベールのようなバイヤーがいるおかげで、地球のどこでも希有(けう)な石が採れると、パリのヴァンドーム広場にあるブシュロンに持ち込まれるようになった。そこから生み出されたブシュロンのダイヤモンドは、王侯貴族はもちろん、世界中の恋する男性たちに、大切な人に贈るためのただ一つのジュエリーとして選ばれてきた。ダイヤモンドの真の価値は、それに関わる人の心の中にこそ宿る―。哲学に裏付けられた輝きは、所有する人の心を永遠に照らしてくれる。

●ブシュロン カスタマーサービス
TEL03-5537-2203 www.boucheron.com

BACKES & STRAUSS

透明にかがやくロンドンの伝統

バックス&ストラウスの時計
リージェント クオーツ、ケースサイズ33╳28㎜、WGケース╳アリゲーターストラップ、ダイヤモンド約3.1ct 、5,670,000円 
リージェンツ・パーク、リージェント・ストリートなどの造営を指揮した19世紀の英国の建築家、ジョン ナッシュ。彼の仕事に見られるクラシカルなプロポーションにインスパイアされたオーバル型のコレクション。文字盤、ベゼル、ラグ、リュウズトップにまで、計3.1ctのダイヤモンドをセット。文字盤センターにはマザーオブパールを配した。

複雑機構のハイエンドウオッチに対するニーズが高まる一方、高品質なダイヤモンドをセットした資産価値の高い腕時計に熱い視線を注ぐ富裕層が増えている。それに呼応し、バックス & ストラウスの評価も高まっている。1789年創業の世界最古のダイヤモンドメゾン。220年以上にわたりロンドンを拠点とて、歴史あるものを慈しむ英国スピリットのもと、誠実にダイヤモンドに向合ってきた。2006年からはフランク ミュラー ウォッチランド グループとパートナーシップ締結し、他に類を見ないダイヤモンドウオッチを発表している。同社の真摯な姿勢は、全てのダイヤモンドにアイデアル カットを施していることからもうかがえる。原石を45%まで削り込む、妥協のないカッティングが施されたダイヤモンドは、拡大鏡で上部から見ると8本の光の矢が、下部からは八つのハートが浮かび上がる。この“ハート&アロー”こそ完璧さの証しと言っていい。誠実なスタンスから生み出された、えも言われぬ輝きをまとったタイムピースに心を奪われてしまうに違いない。

●フランク ミュラー ウォッチランド東京 TEL03-3549-1949 www.backesandstrauss.jp

※『Nile’s NILE』2016年5月号に掲載した記事をWEB用に編集し掲載しています

ラグジュアリーとは何か?

ラグジュアリーとは何か?

それを問い直すことが、今、時代と向き合うことと同義語になってきました。今、地球規模での価値観の変容が進んでいます。
サステナブル、SDGs、ESG……これらのタームが、生活の中に自然と溶け込みつつあります。持続可能な社会への意識を高めることが、個人にも、社会全体にも求められ、既に多くのブランドや企業が、こうしたスタンスを取り始めています。「NILE PORT」では、先進的な意識を持ったブランドや読者と価値観をシェアしながら、今という時代におけるラグジュアリーを捉え直し、再提示したいと考えています。