箱根登山電車の宮ノ下駅から徒歩約5分。国道1号沿いに白いのれんがかかった小さな庵がある。ここから出る専用の渓谷電車が、日常から非日常へと導く架け橋だ。徐々に周囲が深い緑に覆われ、川のせせらぎが聞こえてくると、箱根の自然に抱かれて深い安らぎを感じる未知の滞在が始まる。
美しい渓谷を滑空するように、谷底の異世界に踏み入ると、そこには客室となる端正な9棟のヴィラがひっそりとたたずんでいる。その一つひとつが、邸宅を思わせる完全なプライベート空間だ。すべての客室にリビング&ダイニングルーム、ベッドルームのほか、内風呂、露天風呂、プールを備え、さらに一部にはサウナも用意。ベッドルームを二つ配したヴィラもあるため、2世帯や友人との滞在にも利用しやすい。
和の趣を漂わせながらもモダンにしつらえたそれぞれの客室のなかで、何よりも目を引くのは、吉祥の象徴であり箱根四神となる麒麟(きりん)、鳳凰(ほうおう)、亀、龍を表現したアート作品だろう。日本の伝統的な美術工芸を手掛ける8名の作家、箔工芸作家・裕人礫翔(ひろとらくしょう)氏、唐紙師・トトアキヒコ氏、左官職人・挾土秀平(はさどしゅうへい)氏、彫刻家・橘智哉氏、組子職人・塩澤正信氏、染色作家・福本繁樹氏、漆造形家・村本真吾氏、書家芸術家・遠藤泉女(せんにょ)氏による作品が、安らぎの時間をより豊かなものにしてくれる。厳選された作家の斬新かつ優雅な作品をそばにくつろげる機会はまたとなく、それがここをアートミュージアムホテルと称するゆえんとなっている。