ニセコの里山に憩う

ニセコは冬だけではない。客室から見渡す「蝦夷富士」、羊蹄山の眺めと緑の大地、そして雄大な自然が生み出す季節の美味。2020年12月に開業した、全18室、すべての客室に源泉かけ流し露天風呂付きの宿「楽 水山」に、心身を解放し、活力を得る極上のバケーションへ。

Text Rie Nakajima

ニセコは冬だけではない。客室から見渡す「蝦夷富士」、羊蹄山の眺めと緑の大地、そして雄大な自然が生み出す季節の美味。2020年12月に開業した、全18室、すべての客室に源泉かけ流し露天風呂付きの宿「楽 水山」に、心身を解放し、活力を得る極上のバケーションへ。

館内から羊蹄山を眺める。容姿端麗で、標高1898m、山には原始のままに自然が残されている。
館内から羊蹄山を眺める。容姿端麗で、標高1898m、山には原始のままに自然が残されている。

雄大な山の景色は、人の心を鎮めさせる。ほぼ完全な円錐形の独立峰であり、蝦夷富士とも呼ばれる羊蹄山は、まさにそんな美しさを持つ山だ。過去には何度も激しい噴火を経験し、一帯に火山灰を降らせたが、その灰がかえって土壌を肥沃にし、現在の緑の畑が広がる豊かな風景を生んでいる。力を秘めた峰と穏やかな裾野が感じさせる、悠久の時の流れと大地の営み。そうした人知を超えた存在が心を癒やすのだ。

ニセコに誕生した「楽 水山」は、この羊蹄山を目の前に臨む湯宿だ。全18室の客室はすべて羊蹄山に向いており、部屋から遮るものなく緑の風景が楽しめる。客室は茶褐色の湯の花が効能を物語る自家源泉のかけ流し露天風呂付きで、もちろん湯舟からも羊蹄山が見渡せる。朝に夕に、太陽の加減によって表情を変える山の稜線が脳裏に焼き付き、目を閉じてもその姿が見えるようになった頃、「ここに来てよかった」と自然と笑みがこぼれてくる。

山と対比するように、水の美しさがある。北に日本海につづく石狩湾、南には太平洋の噴火湾など異なる海からの恵みがある稀有な場所だ。手前には尻別川が流れ、向き合うようにもう一つの山、ニセコアンヌプリがそびえている。水と山、動と静の自然に包まれ、都会の喧騒とは真逆の世界にいる身を幸福に思う。

びえい和牛A5ステーキと道産野菜を用いた一皿。
びえい和牛A5ステーキと道産野菜を用いた一皿。

「楽 水山」の大きな魅力は、地元の旬の食材をふんだんに生かした料理だ。食するために滞在する湯宿であり、その日一番の素材に合わせて料理するため、しながきは存在しない。夏ならば脳髄を突くような旨みの積丹産のウニや赤井川村の風味豊かなアスパラガス、ニセコ産のシャキッとした歯ごたえと甘みのあるとうもろこし。なじみ深い食材が、こうも違うものかと鮮烈な感動を与えてくれる。

生産者の想いがこもった力のある食材を、フレンチや日本料理という枠にとらわれず、インスピレーションで料理して提供する「ゆきあい亭」、素材をシンプルに味わう鉄板焼き「海王」、寿司・天ぷらの「入舟」もそろえているため、連泊してもさまざまな味を堪能できる。

里山の緑と川、海の水が心を潤してくれる宿。ロングステイにも最適。
里山の緑と川、海の水が心を潤してくれる宿。ロングステイにも最適。

ニセコや小樽を含む後志エリアは、北前船の寄港地として多くの遺構がある地だ。縄文時代よりこの地に根付き、北前船交易によって発展した人々の交流と調和の歴史を、ここでは食を始め、金沢や京都のアート、さりげなくそろえられた新潟燕や会津漆器のカトラリーなどから感じることができる。

すべての客室に「樺山温泉アンヌプリの湯」源泉かけ流しの露天風呂を用意。
すべての客室に「樺山温泉アンヌプリの湯」源泉かけ流しの露天風呂を用意。

ラウンジの囲炉裏端で旅の仲間と会話し、リラクゼーションルームでさらに癒やしのひとときを堪能することも可能だ。宿を出て自然の中での爽快なゴルフを始め、トレッキングや鏡沼でスケッチをしたり、酒蔵やワイナリーなどを巡ったりと、近隣を歩いてみるのもいい。

緑豊かな自然をより堪能できるこれからの季節は、密を避けながら夏のニセコで暮らすように過ごすロングステイもおすすめだ。雄大な自然と食で心身を癒やす、羊蹄山の里山にたたずむ美食の湯宿へ、いざ。

●楽 水山(らく すいさん)  TEL0136-22-0520

※『Nile’s NILE』2021年6月号に掲載した記事をWEB用に編集し掲載しています

ラグジュアリーとは何か?

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それを問い直すことが、今、時代と向き合うことと同義語になってきました。今、地球規模での価値観の変容が進んでいます。
サステナブル、SDGs、ESG……これらのタームが、生活の中に自然と溶け込みつつあります。持続可能な社会への意識を高めることが、個人にも、社会全体にも求められ、既に多くのブランドや企業が、こうしたスタンスを取り始めています。「NILE PORT」では、先進的な意識を持ったブランドや読者と価値観をシェアしながら、今という時代におけるラグジュアリーを捉え直し、再提示したいと考えています。