「朝4時半に起き続ける」という勇気

時代を読む-第19回 原田武夫

時代を読む-第19回 原田武夫

時代を読む――原田武夫 第19回 「朝4時半に起き続ける」という勇気

ここに来てバチカンについて調べている。グローバル・マクロ、すなわち国際的な資金循環の今とこれからを考えるに際して、バチカンの動向は決定的な意味を持つからだ。すると、米雑誌の関連記事を読み進める中で思いもかけず、とあることを発見してしまい、思わず「なるほど、そうだよな」と一人うなずいてしまった。

「ローマ法王フランシスコは、外部から見る限り、午前4時半に起床し、部屋の明かりをつけている」

「一体この何が重要なのか?」と思われるあなたは、かなり出遅れてしまっている。なぜなら何を隠そう、この起床時間に未来を乗り切るためのヒントがあるからだ。結論から言うと、世界のリーダーたちは皆、「午前4時半」には起きて、活動を開始している。なぜなら、そうすることの効能は絶大だからだ。

まず午前4時半に起きると、朝の始業までに優に4時間近くある。リーダーであれば当然、「空間の整理」として職住接近も図っているだろうから、この時間はまるまる何かの作業にあてることができる。忙しいトップの日常の中で、4時間もまるまる毎日時間ができるのは大変貴重だ。

しかも毎日これを続けていくと、そうではない人々との間で「成し遂げられたこと」に歴然とした差がつく。

一方、午前4時半に起きるためには当然、「六本木で飲んで午前様」というわけにはいかない。よく知られている通り、人間は成長ホルモンが午後10時から午前2時までの間に、体内で出るようになっている。もっというと、この時間帯を外してしまうと、いくら寝ても人間の身体はリカバリーしないのである。そこで午前4時半に起きるとなると、この時間帯を挟んで午後9時半には寝ようということになってくるのだ。

「そんなことをして人付き合いができるのか?」

そう不安に思うかもしれない。だが、心配することなかれ。実はよくよく考えると、私たちがこなしている「人付き合い」というものは無駄なものが多いのだ。

 午後9時半に寝るということは、逆算すると会食は午後5時ごろからになる。この時間帯に夕食をとることができるのは、自分で時間を決められる者、すなわちリーダーだけだ。そう、実はこの時間帯で会食をすると決めると、ダベリングはなくなり、真の意思決定権者だけとネットワークを作ることになるのである。

しかもこのことを知って、午後5時からやっている料理屋は意外に少ない。逆にいえば、午後5時から開店している店は、富裕なリーダーしか来ないからそれなりに儲かり、良い材料で旨い料理に良い酒を出し続けることができるのだ。

世界は今、ディスインフレーション政策の余波で、はまった極超低金利政策の時代を抜けられないままでいる。カネを借りるのがあまりにも簡単なので、大金を借りては金融市場で投機が行われ、それでバブルが起きてはすぐに崩れるということを繰り返している。その結果、乱高下するボラティリティにあふれるようになってしまっているのだ。当然、多くの人々はそれに翻弄されている。

そんな時代だからこそ「午前4時半に起き続ける勇気」をリーダーたちは持つべきなのである。なぜなら、そうすることによってのみ、世界にあふれるボラティリティに翻弄されることなく、真のリーダーたり得るからである。

ちなみに、そのことを我が国の先達は知っていた。今や花嫁修業か正座による苦痛の場となってしまった茶道。その茶道で用いる茶の湯は、「寅の刻」で汲むべしとされている。要するに、午前4時前後の2時間のうちに起きて、汲めというのである。その理由はここまで読んできた読者には、お分かりだろうと思う。

いかがだろうか、ローマ法王フランシスコも実践している真の「リーダー道」。後はやり遂げるか否か、自分に打ち克かつ「勇気」が問われるだけだ。

原田武夫(はらだ・たけお)
元外交官。原田武夫国際戦略情報研究所代表(CEO)。
情報リテラシー教育を多方面に展開。講演・執筆活動、企業研修などで活躍。
https://haradatakeo.com/

ラグジュアリーとは何か?

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それを問い直すことが、今、時代と向き合うことと同義語になってきました。今、地球規模での価値観の変容が進んでいます。
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