「朝鮮有事」騒動と「戦後総決算」

時代を読む 第51回 原田武夫

時代を読む 第51回 原田武夫

船
ミサイル

この原稿を書く直前に米国のトランプ政権が「とんでもない手段」に打って出た。シリアのアサド政権が化学兵器「サリン」を無垢な市民に対して行使したとして、いきなりトマホーク型ミサイル59発(時価約50億ドル相当!)を撃ち放したのである。「トランプはうるさい奴だが、所詮(しょせん)、口だけの男だ。ビジネスマンでもあり、交渉の結果、妥協をするのは得意であろうから、武力に訴えるはずがない」

そう、心のどこかで考えていた世界の人々は、文字どおり度肝を抜かれた感が強い。もっとも公開情報分析の専門家たちの間では「事前にロシアと米国が空爆目標について内々で協議を行っている」との情報が伝えられていたので、私自身は「やはりそう来たか」という思いがしている。もっと言うならばマーケットにおける定量分析という観点からも、「2017年4月7日から商品(コモディティー)マーケットが全面高になる」という分析に何を隠そう、今年に入って早々から接していたのである。

したがって「あらかじめ語られていたタイミングに、あらかじめ想定されていた出来事が、後から考えると、さもありなんという出来事を理由に生じた」というのが正直なところなのだ。

だがシリア、そして中東は結局のところ我が国にとって「地球の裏側」なのである。それだけでは(ある意味悲しいことに)我が国では、「対岸の火事」といったレベルでしか取り扱われないのが通常だ。これに対して今回は全く違う。これまたどういうわけか、シリアに火が付くのとほぼ同時に、米国は朝鮮半島に向けて兵力を向け始めたのである。これにはさすがの我が国経済界も、びっくりといった感じだ。さまざまな企業クライアントから私のところに、リアルタイムで「どうしたらよいのか。これからどうなるのか」といった問いかけが殺到している。

朝鮮半島についてはある種のセンスをもって、対峙する必要があるというのが私の考えである。もっと言うならば、私はこの「センス」を己が持っていることに外務省北東アジア課で北朝鮮班長を務める中において気づき、しかもそれを他の同僚たちがなかなか持たず、話が全く通じないことがあることに伴うフラストレーションも、一つの大きな理由となって12年前、外務省を自主退職したのであった。時は2005年のことである。実のところ爾来、北朝鮮を含む朝鮮半島情勢は本質的に全く変化していない。

朝鮮半島をウオッチし、分析する際の秘訣はたった一つ。それは時々刻々と変化するそこでの出来事や、その当事者たちが吐く激しい言葉にいちいち翻弄されないことなのである。そうではなくて必要なのはあくまでも、ビッグ・ピクチャー=「俯瞰図」を忘れないことなのだ。朝鮮半島情勢、特にその中でも「北朝鮮問題」は、いわゆる国盗り物語の続きのようなものなのであって、それぞれの細かな戦いについては知らずとも「要するにどこが優勢なのか」を察することができれば、今起きていることも実は正確に理解でき、かつ今後についても予測ができるものなのである。

そうした中で決して忘れてはならないこと、それはこれから朝鮮半島で起きることは、我が国にとって本当の意味での「戦後総決算」になるということなのだ。思えば明治維新以降、我が国の近現代史は戦前には、「朝鮮半島」絡みで動かされてきた。戦後も実は同じであって、これをあたかも封印するかのような構造を工作することに、戦後日本のリーダーシップは成功したので「朝鮮戦争」等を除けば、南北朝鮮が我が国と直結しているとは思えなくなっているだけなのである。

朝鮮半島は今後、体制そのものが南北で刷新される。それは我が国の体制転換にもつながる。いよいよ足元でグレート・ゲームが始まった。お気づきだろうか。

原田武夫 はらだ・たけお
元キャリア外交官。原田武夫国際戦略情報研究所代表(CEO)。情報リテラシー教育を多方面に展開。2015年よりG20を支える「B20」のメンバー。

※『Nile’s NILE』に掲載した記事をWEB用に編集し再掲載しています

ラグジュアリーとは何か?

ラグジュアリーとは何か?

それを問い直すことが、今、時代と向き合うことと同義語になってきました。今、地球規模での価値観の変容が進んでいます。
サステナブル、SDGs、ESG……これらのタームが、生活の中に自然と溶け込みつつあります。持続可能な社会への意識を高めることが、個人にも、社会全体にも求められ、既に多くのブランドや企業が、こうしたスタンスを取り始めています。「NILE PORT」では、先進的な意識を持ったブランドや読者と価値観をシェアしながら、今という時代におけるラグジュアリーを捉え直し、再提示したいと考えています。